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現代宗教研究第43号 2009年03月 発行

歌声で立正安国世界平和の祈り─響け身延から世界へ─

第九回日蓮宗教化学研究発表大会

歌声で立正安国 世界平和の祈り
─響け身延から世界へ─
大 森 ゆきゑ
 
 
 お寺に、いろいろな悩み事で、ご相談に来られる方がいらっしゃいます。
 その方達に、どのように対応したらよいのでしょう。
 何も学んでいなかった頃には、住職が留守の時にはそのままお帰りいただかなければなりませんでした。
 寺庭婦人の立場で、日蓮聖人のお心に叶ったお題目を、檀信徒の方々にどのように伝えさせていただいたらよろしいのかと思いながら、毎日がアッという間に過ぎてゆきます。
 仏教の本が手の届く所に山積みになっておりましたけれども、なかなかゆっくり開いて読む時間はありません。心の中は焦っておりました。
 二十五年程前になりますが、身延山で寺庭婦人研修道場が毎年開催されておりました。今は、大変残念なのですが行われておりません。全国から二十名前後の方々が集まって、講師の先生方に仏教のお話、仏事のお作法等を学ばせていただく機会がございました。
 悩んでいる私にとっては大変有難い研修道場でございました。その時に法華和讃、仏教讃歌の講習をしていただいたのです。
 これなら私達にもできるのではないだろうか。
 日蓮聖人様の御一代記を詠わせていただきながら、日蓮さまのお心に触れ、ご苦労をしのび、法華経の内容の歌詞を詠わせていただく中で学びながら、少しずつでも理解を深めてゆけたなら、有難い事だと思いました。一大決心をし、寺庭婦人会の新年会に初めて出席して、自信はありませんが勇気を振り絞って和讃を詠わせていただきました。
 平成元年一月です。その時代は宗務所主催の寺庭婦人新年会、一年に一度だけの集まりでした。
 きれいな装いをされておられる皆様に向って、「神奈川二部で法華和讃を檀信徒にも呼びかけて練習をいたしませんか。私達もお題目を弘めさせていただくお手伝いを致しましょう。皆様如何でしょうか。」と、提案し、その場で全員が賛同して下さったのです。
 しかし、一年後でなければ皆様にお逢いする事はできません。出席されていた宗務所長様に講師の方をお呼びして練習をはじめさせていただきたいとお願い致しましたが、良い返事はいただけません。
 「今、決めておかなければ来年になってしまうわよ」と、寺庭婦人の方にアドバイスをもらいましたので、またまた所長様に「お願い致します」と、何回も頭を下げてやっとその場でオーケイが出たのです。
 早速、翌月の二月から、当時の寺庭婦人会長の鎌倉の妙法寺さまにて、静岡中部法華和讃振興会のお上人様をお招きして初めて法華和讃の講習をしていただく事ができたのです。こうして平成元年に神奈川県第二部、寺庭婦人会の和讃部が発足致しました。
 お手元の資料に私達の二十年の活動の歩みをお配りしてございます。振り返ってみますと、よくこれだけの活動をさせていただけたものだと、驚きと共に自坊のお上人の理解と協力なしでは何も活動する事はできませんでした。本当にあらためて感謝を致しました。
 和讃部が発足してからは、身延山の開闢会に檀信徒と共に大本堂で、ご草庵跡では寺庭婦人が和讃をご奉詠させていただき、参加された皆様からの感激の声を文集にまとめました。日蓮聖人御一代記の和讃の御首題帖を妙法寺御山主様のご協力をいただきまして作成致し、平成四年から誕生寺、清澄寺と御一代記和讃奉詠団参が始まりました。
 日持上人の七百遠忌には静岡方面に参拝、平成六年の終戦五十年には、戦没者英霊の方々に追善供養の和讃を、ご奉詠できたら喜んでいただけるのではと、宗務所のご協力のもと、葉山文化会館にて和讃の法要が営まれ、戦争体験をされた方々の文集を、多くの方々のご協力をいただき作成、配布することができました。
 毎年、寺庭婦人達の企画により御首題帖の霊跡参拝を続けました。平成十年、宗務所主催立教開宗七五〇年、管区大会を和讃の十周年とあわせていただき、箏曲「日蓮」の初めての演奏、コーラスに参加。平成十五年には鎌倉開教七五〇年で幼稚園児、小中学生の子供達も参加して、仏讃歌、和讃、お会式まとい、太鼓を入れ、大勢の方々の参加をいただきました。
 寺庭婦人の四人が発起人となった「和讃の集い」。平成十五年より全国の方々に呼びかけ、霊跡にての和讃奉詠。第一回は池上本門寺大坊にて、第二回はかねてから念願でありました、比叡山、延暦寺大講堂の日蓮聖人のご尊像の御前でのご奉詠。全国各地より参集された方々、大講堂満席にしての和讃御奉詠は参加者一同忘れられない感動でした。
 又、インドの霊鷲山山上にての、妙法蓮華経・和讃の御奉詠等々。夢のような目標にむかって一歩一歩、計画、練習、実行を積み重ねてまいりました。
 お陰さまで寺庭婦人同志のチームワークがしっかり結ばれてまいりました。そして、お寺の枠を越え、檀信徒の方々とふれあい、いつの間にか全国各地の方々とのご縁が結ばれてまいりました。
 平成二十一年は「立正安国論奏進七五〇年」を、お迎え致します。
 平成二十年は神奈川県第二部和讃会発足二十周年、この機会に日頃より熱心に和讃と仏讃歌を練習されている全国有縁の方々に呼びかけて、身延山で平和を祈る大会を開催したい!と、発願させていただいたのです。
 ところが、いつも出てこられる和讃会の寺庭婦人メンバーは十数人、そのメンバーで五百人を募集するなんて無理ではないかとの声がありました。
 皆さんの協力がなければ実行する事はできません。
 困ったり、迷ったりする時、いつも日蓮さまに問いかけます。
 「日蓮さま、如何でしょうか。私達の願いが日蓮さまのお心に叶う事であったらどうぞお導き下さい」と、祈ります。
 いつも大事な時には背中をポン!と押してくださる方が必ず現れて下さるのです。
 「身延山の大会、素晴らしい計画だからやりましょうよ。」と、役員全員が協力して下さる事になりました。
 そして、実現にむけて募金箱を作り、練習や会合の度にご浄財を集め、宗務所のご協力をいただき、身延山大会への実行委員会が設立されたのです。
 日蓮さまに報恩の真心を、お捧げしたい。
 立正安国論の一節でも参集された方々と心を合わせて拝読させていただきたい。
 大曲である箏曲「日蓮」を真心こめて演奏、歌わせていただきたい。
 日蓮さまの魂の棲まわれる、総本山身延山大本堂でのご奉詠は全国の方々の念願でもありました。
 立正大学教授であられる磯貝静江先生に、大会の趣旨をお話して「私達の願いを叶えていただきたい」と、お願い致しましたら、「草の根運動によるこの企画は素晴らしいね、是非協力致しましょう。」と、賛同して下さいました。
 各地の皆様も大変喜んで練習に励んでまいりました。
 大会当日、身延山大本堂では八百人を越える方々のご参集をいただき、魂をひとつに合わせて御奉詠された和讃と仏讃歌、磯貝静江先生の全身全霊をこめた指揮による箏曲「日蓮」の演奏とコーラス、大本堂より響きわたる御題目。参加された方々は共に感動し、「涙が止まりませんでした」と、大会後に全国各地より感激の御礼のお手紙が沢山届きました。
 まさしく
「歌声で立正安国、世界平和の祈り、─響け身延から世界へ─」を、日蓮さまのお導きと、多くの方々の真心あるお力添えにより成就させていただく事ができました。
 どんな事でも継続してゆく事は大変な事でございます。
 神奈川県第二部法華和讃会では宗務所のご理解とご協力をいただきました、お陰さまで精一杯活動させていただく事ができました。
 大変有難い事だと思っております。
 でも、全国各地で頑張っていられる方のお話をお聞きしますと、なかなか宗務所のご理解がいただけない、役職についておられるお上人のお考えによって、行事に参加しても和讃や仏讃歌を入れていただけない現状をよく耳に致します。
 目標があると練習にも励みが出てまいります。
 御奉詠の場を与えていただける事が継続してゆくのに大切な事であると思います。
 寺庭婦人も毎日忙しく自坊の仕事がございます。
 ご住職のご理解とご協力がなければ身動きする事ができません。
 昨日も大変残念に思った事がございます。
 清澄寺のお会式に行く途中、お寺の半纏を着て、太鼓を持ちバスを降りた時、そばに立っていた人に、「立正佼成会の方ですか」と、聞かれたのです、「日蓮宗の延寿寺です」と、答えました。
 お題目を唱えておりますと、「創価学会ですか」と、言われる事があるとも聞きます。
 新興宗教の団体が若い人達を乗せ、バスが何台も本山に参拝されている姿をみておりますと、日蓮さまのお心に叶ったお題目、正しい信仰を伝えてゆく事の大切さを痛感致しております。
 私達一人一人の力は微力であっても、出来る事から一歩ずつ輪をひろげてゆく事しかできません。
 日蓮宗門を担っておられるお上人様方にお願いでございます。全国の寺庭婦人、檀信徒が信仰の糧として励んでおります、和讃と仏讃歌にどうぞご理解とお力添えをよろしくお願い申し上げます。
 本日、和讃会二十年の歩みの中で授かった宝物を持ってまいりました。
 これが日蓮聖人御一代記、和讃御首題帖でございます。霊跡を和讃奉詠させていただいた御首題でございます。あの世に旅立ちの時、持って行かないで家の宝にして下さいと、皆様にお話してございます。
 それから太鼓の袋です。表は聖詠の「立ち渡る 身の浮雲も 晴れぬべし……」と、裏には日蓮宗の宗紋が両側に刺繍されております。和讃のお仲間の方が作って下さったお宝です。
 それから身延山大会で全員の方々にお配りした楽譜カバーでございます。大本堂で開いた時に蓮の花が一面に開花した風景をイメージして寺庭婦人のメンバーが企画、作成致しました。参加された方々も大会後に使えるとよろこんでいただきました。
 まだまだ宝物は沢山ございますが、和讃のお陰さまで管内はもとより、全国の方々とお題目をもととして、お友達も沢山できました事が私にとって最高の宝物でございます。
合掌 
神奈川県第二部法華和讃会二十年の歩み
平成元年 鎌倉、妙法寺 妙法寺を会場として練習開始・法華和讃の奉詠に取組始める
寺庭婦人会・和讃部として発足、各寺にて和讃奉詠が始まり管内各所にて合同練習を重ねる
平成三年 身延山開闢会大本堂にて 寺庭婦人、檀信徒と共にご奉詠(感激の文集作成)
平成四年 法華和讃・御首題帖作成 日蓮聖人御一代記の和讃を妙法寺御山主藤田教忠住職の謹書により二十五番まで収録する
千葉、誕生時・清澄寺団参 和讃奉詠霊跡参拝始まる(宗務所主催)
平成五年 静岡 蓮永寺・永精寺団参 日持上人 七百遠忌
平成六年 終戦五十周年・世界立正平和祈願・和讃奉詠大法要 葉山文化会館にて開催、戦争体験文集作成(平和のいのり)
伊豆・伊東
 仏現寺・蓮慶寺・蓮着寺団参 伊豆法難の霊跡
平成七年 池上 本門寺 大坊 本行寺団参 ご入滅の霊跡
平成八年 厚木 妙純寺 妙伝寺団参 星降りの霊跡
平成九年 横浜アリーナ 立教開宗七五〇年慶讃中央大会に参加
 
 
平成十年 法華和讃会発足 寺庭婦人会・和讃部より法華和讃会として宗務所所管の会へと発展する
鎌倉、妙法寺にて 十周年記念の法要と和讃奉詠
安国論寺、妙長寺、常栄寺団参 鎌倉霊跡めぐり
立教開宗七五〇年慶讃・法華和讃奉詠十周年記念「いま、蓮の花ひらくとき」 管区大会(横須賀市芸術劇場ベイサイドポケット)にて仏教讃歌と大法要
箏曲(日蓮)演奏・コーラス、立正大学磯貝静江先生、ブンダリーカ参加・協力により始めて発表
平成十一年 新潟・佐渡妙光寺、妙宣寺、妙照寺、根本寺団参 佐渡 ご法難霊跡
平成十二年 身延山、奥の院 七面山、敬慎院、小室山、妙法寺、上澤寺団参 七面山参拝者と身延山奥の院参拝者と分かれて奉詠参拝
妙法寺にて合流する
平成十三年 福岡 本仏寺、銅像護持教会 佐賀 光勝寺 熊本 本妙寺 蒙古襲来 九州団参
熊本 寺庭婦人の方々と合流し、一緒に和讃奉詠
平成十四年 鎌倉開教七五〇年日蓮聖人劇(鎌倉芸術劇場) 開演前に和讃奉詠、神奈川一、二、三部の参加協力を頂く
鏡忍寺、藻原寺、誕生寺、清澄寺 立教開宗七五〇年記念団参
鎌倉開教七五〇年慶讃
「いのち蘇る 音楽の集い」 竜口寺にて、神奈川県一、二、三部寺庭婦人会、和讃会の参加ご協力を頂き、仏讃歌、和讃で奉詠、幼稚園児、小、中学生も参加、箏曲「日蓮」演奏、コーラス
平成十五年
 
 
第一回「和讃の集い」
池上 本門寺、大坊 本行寺 福島、千葉、岡山、神奈川県より寺庭婦人4人が発起人となり全国の方々に呼びかける
団体別にご奉詠、青森和讃・静岡和讃が一体となり合同での奉詠
ハワイ団参(宗務所主催)
ホノルル妙法寺 日蓮宗別院 ハワイ開教一〇〇年に参加
ハワイにてご奉詠
平成十六年 福島団参 妙国寺、浄光寺 浄光寺の檀家さんの方々と合流して和讃のご奉詠
平成十七年 岡山団参 蓮昌寺、實成寺 實成寺にて岡山法華和讃会の方々と合流して和讃のご奉詠
平成十八年 仏讃歌練習用CD作成 「時空をこえて」
第二回「和讃の集い」
京都、立本寺、本圀寺、頂妙寺、横川定光院、比叡山延暦寺 (四人の発起人主催)
全国各地より結集立本寺、横川定光院、延暦寺大講堂にて和讃奉詠
インド団参 (宗務所主催)
霊鷲山山上にて和讃法要、テープに収録した檀信徒の歌を山上にてご奉詠、寺庭婦人、檀信徒よりのご浄財は龍宮寺、法輪寺、日本寺へ寄付
平成十九年 千葉団参
妙蓮寺、日蓮寺、誕生寺、清澄寺 妙日尊儀七五〇年遠忌
平成二十年 鎌倉 妙法寺 和讃二〇周年記念御礼参拝
身延山久遠寺 大本堂にて
立正安国論奏進七五〇年慶讃
「歌声で立正安国 世界平和の祈り
   ─響け身延から世界へ─」 全国法華和讃・仏讃歌奉詠身延山総登詣大会
全国各地より八〇〇人、当日参拝希望者約一〇〇人
和讃と仏讃歌、箏曲「日蓮」演奏・コーラス
その他 全国法華和讃大会に参加、管内行事に参加
 
 平成二十年十月二十八日
神奈川県第二部 法華和讃会

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