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教化学研究1 現代宗教研究第44号別冊 2010年03月 発行

檀信徒も真剣に取り組もう宗門運動

 

檀信徒も真剣に取り組もう宗門運動
 
池 上 宗 俊
 
 平成十七年四月一日より宗門運動「立正安国論・お題目結縁運動」を開始して四年目になります。今年は「立正安国論」奏進七百五十年の慶賀の年を迎えました、この運動を檀信徒に深く浸透させなければなりません。私の場合は宗務院で行われている諸々の出来ごとを全分野に亘り網羅しています「日蓮宗新聞」のみで知ります。私自身も生活の糧として読ませていただいています。日蓮宗の宗徒であるならば、一人でも多くの方々に購読を是非おすすめいたしたいと思います「立正安国・お題目結縁運動」は長期に亘り続くのではないかと思っています。宗祖御降誕八百年を迎える平成三十三年も近づいています。
 何と言っても長期間実施されるのですから檀信徒一人一人がこの運動の趣旨を理解して頂けなければ成就しません。
 日常の生活においては勿論のこと、菩提寺の行事においても積極的に参加しなければ、輪が広がりません。各お寺では、日蓮宗のお寺として執り行わなければならない年中行事がありますが一番参詣者の数が多いのは、お盆の施餓鬼法要です。一年で最も重要で大切な行事は日蓮聖人ご入滅を記念して行われる「お会式」には参拝者は激減します。日蓮聖人が、この世で限りある生命から久遠の生命に生まれかわられ、私達「日蓮宗宗徒」はじめ全世界の人々に永遠に生きつづける悠久な命への「誕生日」であることですので、日蓮聖人にめぐりあえたという法悦を檀信徒は体で表現し、ご命日にあたって誓いを新たにする日、特に檀徒にはもっとも大切にしなければならない日です。常日頃から檀信徒は日蓮聖人の御教えをお寺の行事があるたびに色々と学んだり法話も聞く機会が少なくありませんが、難解で理解しがたいので、只ただ静聴している状態です。殊に宗教用語は人が理解しやすい言葉を使うのが仏教の教えの基本であると思います。日蓮聖人も上野殿御返事の中で「人にものを教うると申すは舟を水に浮かべて行きやすいように教え候なり」と申しています。漢字には、仏教用語の読み方もありますので、ホワイトボードやプロジェクター等を駆使して解りやすく解説して下さい。多くの檀信徒は宗教のことについては、幼稚園児並なのです。今回の宗門運動に檀信徒があまり感心がもてないのか、心を動かされる程ではないものなのでしょうか。このように思うのは私だけであればよいのですが、何ぜこのようになるのかを考えますと、私が小学生の頃から霊能者とか、霊媒者というものに興味をもち十年間ぐらい、五人ほどの方とお付合したことがあります、いづれも「法華経」を寄りどころとした方々です。ここに尋ねてくる人は、願いが叶い命を助けて頂いた、窮地を脱したとか、金品を盗まれる災難にあった等さまざまな理由のようでした。このような相談者は、ご利益のみを期待しての信心しか持ち合わせいないのです。入信の動機付けはどうであろうと、「法華経」に縁をもった人です。ご利益信仰者と言えども「正法」について、信者に教えなかった「結社」等は、いつのまにか自然消滅しています。強力に日蓮聖人の御教を熱心に教え、地道に根気強く勉強会を続け、信者を教導してこられた方は、日蓮宗の寺院として檀信徒の数も多く現在も立派に活動しています。
 北海道の日蓮宗の寺院には名刹と言われるお寺も有りませんし歴史も浅く、先祖代々寺院との繋がりが希薄なことも影響しているのか、また当地の人達の気風によるものか、解りませんが「宗務院」で決定しました行事等には、今一つ、反応が鈍いように感じますので、住職やお上人の方々により一層の教導に御尽力をお願い申し上げます。また、私が子供の頃から「日蓮宗」の多くのお上人さん方から、学ばせていただきましたことがあります。
 「宗教」には、「理」と共によく理解出来るような「教」を持たねばなりません。その教えを身につける為の「行」も必要で無視する訳にはまいりません。その教に従って実際に得るものがなくては、絵に描いた餅であったのでは何にもなりません。「行」があれば必ずしるしの「証」の四つ説かれていなければならないと、先達のお上人さん方から、このように教えて戴きました記憶があります。然し乍ら、最近の信徒や檀徒の中にも「証」(利益)を性急に望む人が多く見受けられますので、益々住職初めお上人さま方の本領を発揮し「法華経」の御教を私達「迷える子羊達」に御教導をおねがい致します。暗に「ご利益」のみを求めてくるような未信徒者には容易に迎合しない方がよいのではないかと存じます。と申しましても、未信徒者と言えども「法華経」に縁をもった人です。今後いかにこれらの人を「正法」へ導いていくのかに力を入れ、未信徒者を「信徒」となるように、フォローして下さい。
 今回の宗門運動に、もう一つ盛り上がりに欠ける要因に一抹の懸念されることがあります。これは、「霊断師会」についてであります。既成の日蓮教団にありながら今後どちらの方向に向かうのでしょうか、このまま教団内にとどまるのか、また一つのグループとして進んでいくのでしょうか、「日蓮宗霊断師会本部」から発行されているパンフレットによりますと、〔新日蓮教学〈日蓮大聖人の教え〉に従い、九識霊断法〈運命の判定・指導〉五種護符・充霊法華三昧法(祈りの強化法)倶生霊神符(ご加護の強化符)を活用し、南無妙法蓮華経の神秘なご利益によって、この世界を仏様のいらっしゃる浄土とすべく活動する日蓮宗の団体です。日蓮宗霊断師会では、倶生霊神符を着帯する人を聖徒と称し、各会員僧侶(霊断師)が指導する倶生霊神符着帯者の集いを聖徒団と称しています。〕とあります。現在この団体の寺院数は千二百ヶ寺、聖徒団数三十三万といわれています。会員のために機関誌「聖徒タイムズ」を月一回発行し会員を教化しています。また平成十四年に復刻第三版発行の高佐貫長お上人さんの著書「十字仏教」を読ませていただきましたが、九識霊断法が新日蓮教学とどのように係わりがあるのか難解で、私には理解できませんでした。霊断師会に所属している寺院によって違いがあることでしょうが、「修法師会」に属している方もいますので「木剣祈祷」も併用して行っています、檀徒と僧侶が一体となって未信者をなんとかしてお題目の正法に結縁させたいと願っています。悩みごとなどお持ちの知人にも勇気を出して倶生霊神符をプレゼントしてくださいと言われますので「倶生神」のことや「九識霊断法」の話をしますと、日蓮宗は変わったのですかと言われます。教団の中に教団があるように思ったのではないかと考えています。これからの「霊断師会」は日蓮宗の他派のようにイデオロギー的にボーダーラインを明確にしていくのか、一檀徒として感心をもって将来を危惧しています。霊断師会では、今後も檀信徒に対し、いろいろと教導して行くと思います。私の理解できた範囲で申し上げますと、理・教・行、においてそれほど違いはないのではないかと思います。相対的に違うというだけで、絶対的に違いはないように思われます。日蓮聖人の御教えの根本は法華経です。あの世ではなく、この世にこそ仏国土を築くのだという考えから「立正安国論」を奏上しました。国土の成仏なくして民衆(衆生)の成仏はあり得ないと申しています、と共に、現在全世界的な規模で問題視されています「人類と環境」の密接なつながりも説いています。今宗門で行われている「立正安国・お題目結縁運動」にも聖徒タイムズにも御理解をいただき、宗務院の事業や行事など紙面に掲載していただければ聖徒団三十三万の読者にも知れ渡ります。全国の宗徒と一丸となって目的達成のため進めて行こうではありませんか。お互いに「持ちつ持たれつ」で協力をお願い致します。
 全国の檀信徒の皆さんへ菩提寺にお参りのときに住職やお上人さんに宗教のことなら何でも質問してみて下さい。また自分の考えや疑問に思ったことを話してみて下さい。檀信徒一人一人が「立正安国」とは何かを真剣に取り組んで下さい。私たち檀信徒が深く考えることにより「立正安国・お題目結縁運動」もより一層深まっていくことを確信しています。一檀徒が浅学非才を顧みず、不遜なことを申し述べましたことをお許し下さい。   南無妙法蓮華経。

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