現代宗教研究第38号 2004年03月 発行
平成十五年度事業報告
平成十五年度現代宗教研究所事業報告 1、教化研究会議 【1】第三十六回中央教化研究会議 期 日 平成十五年九月三日(水)・四日(木) 会 場 日蓮宗宗務院 宿 泊 大森東急イン 参加人数 一六二名 開催趣旨 中央教化研究会議は、広く法華経教化について論議し、具体的方策を樹立することを目的に開催します。 =cd=70b6中央教化研究会議は、各管区の教区教研運営委員を中心として、教区・管区での教化活動の現状を話し合い、教化に係わる諸問題を研究・調査します。 討議を通して、教学の現代化、教化の方策、社会問題等に取り組み、問題の把握、解決、教材資料の作成をめざします。 論談を通して、日蓮一門、地涌の菩薩としての意識をたかめます。 テーマ 日蓮宗の布教を考える |通仏教化した現状と摂受折伏問題| (説明) 立正大学名誉教授今成元昭師が、雑誌『統一』平成十一年四月号で「日蓮聖人といえば折伏主義の人だという印象を懐く人が多いようですが、『観心本尊抄』に、僧たるものは摂受行によって正法を弘めなければならない、とおっしゃっているように、仏説の本道が『摂受正法』にあるということをしっかりと弁えた方であった」と書き、『日蓮宗勧学院報』第二号に「五編しかないご真蹟遺文の摂受折伏に触れている御書の中で、先ほどの『開目抄』の(『常不軽品のごとし』の)一句が(後代の加筆で)日蓮聖人のお言葉でないとすると、折伏がいいとおっしゃっているものは一つもない。むしろ摂受がいいとおっしゃっている」と発表して以来、《摂受折伏》論争がおこっています。 岩間湛正宗務総長も昨年三月の定期宗会で本年度施政方針重点目標のひとつに「宗門の基本姿勢としての摂折問題」を挙げ、宗会直後の当研究所主催「法華経・日蓮聖人・教団論研究セミナー」では今成師講演「日蓮聖人の摂受・折伏観について」と質疑応答・懇談会をおこないました。 以上の成果に続き本年の中央教化研究会議は、いま研究・調査を求められている摂受折伏問題を、現代教化の観点から取り組みました。 開催方式 今回の中央教化研究会議は、左記の方式で開催します。 立正大学名誉教授今成元昭師に摂受正意の立場から、立正大学法華経文化研究所長伊藤瑞叡師に折伏正意の立場から、それぞれ二時間講演していただきます。 =cd=70b6両師の講演内容に対する質問を受け付け、両師並坐のかたちで答えていただきます。両師の対論は、予定いたしません。 両師の講演内容を問題提起として、三分科会(1現代教学、2教団教化、3現代社会)にわかれ、摂折問題を、 1現代と教学|摂折論の現代的把握、教学の現代的把握 2教団・教化|世間の目線にたった布教、二十一世紀に適応する具体的な教師像、葬儀の規範 3現代社会|社会問題への意思表示、立正平和運動 の視点から検討し、具体的な提案にまとめます。申込時に、参加分科会の希望を聞きます。 全体会議で三分科会の報告を聞き、テーマ「日蓮宗の布教を考える|通仏教化した現状と摂受折伏問題」のまとめをおこないます。 =cd=70b9各教区教研会議報告書や討議資料、管区並びに教化センターで作成された教箋等の教化資料を展示し、教化情報コーナーで宣伝します。各寺院教会結社や個人有志で発行のものは、各管区(教化センター)に委託して下さい。 日 程 第一日目 九月三日(水) 受 付 一〇時〇〇分 開 会 式 一〇時三〇分 基調講演 一一時〇〇分~一三時〇〇分 立正大学名誉教授 今成元昭師 「日蓮聖人の摂受折伏観について」 昼 食 一三時〇〇分~一三時四五分 基調講演=cd=70b6 一三時四五分~一五時四五分 立正大学法華経文化研究所長 伊藤瑞叡師 「開目抄における摂折観|仏教古典学の立場から」 質 疑 応 答 一六時〇〇分~一六時三〇分 分科会討議 一六時四五分~一七時四五分 (1|五階講堂 2|四階第一・二研修室3|四階第三・四研修室) 移 動 一八時〇〇分 夕 食 会 一九時〇〇分~二〇時三〇分 第二日目 九月四日(木) 朝 食 移 動 八時〇〇分 分科会討議 九時〇〇分~一一時〇〇分 全 体 会 議 一一時一五分~一二時一五分 閉 会 式 一二時一五分~一二時三〇分 昼 食 一二時三〇分~一三時〇〇分 解 散 一三時〇〇分 参加者 教区教研運営委員、或いは内容に関心がある教師(管区一名必ず参加のこと。一名以上参加ご希望の場合は、宗務所からあらかじめ日蓮宗現代宗教研究所へご一報ください)。女性教師も積極的にご参加ください。 【2】教区教化研究会議 十一教区にて開催。日時・テーマは次の通り。 ●第二十七回中四国教区教化研究会議 七月二日~三日 鳥取県米子市米子ワシントンホテルプラザにて開催 基調講演 「立教開宗七百五十年を新たなる出発点として |ご聖誕八百年に日蓮宗は生き残れるか|」影山教俊(千葉県釋迦寺住職) 第一分散会「日蓮聖人」「いのち」「幸せ」 第二分散会「お釈迦さま」「私とは」「幸せ」 第三分散会「題目って」「お寺ってどんなとこ」「幸せ」 第四分散会「法華経」「お坊さんってどんな人」「幸せ」 ●二十七回北海道教区教化研究会議 八月二十七日 北海道札幌市ガトーキングダム・サッポロ《オテル・ド・レーゼン》にて開催 全体会議テーマ「『法器養成』師弟教育を巡る問題」 基調講演「子弟教育の過去・現在・未来」 浜島典彦(勧学院嗣学職) ●第十回北関東教区教化研究会議 九月八日~九日 群馬県吾妻郡栗生楽泉園(ハンセン病国立療養所)、日蓮宗妙法会にて開催 テーマ「伝える|日蓮宗におけるハンセン病救済活動の軌跡と現状|」 基調講演「綱脇龍妙上人の救らい活動」 小野文=cd=62f9(群馬県天龍寺住職) 「ハンセン病の歴史と現状」 並里まさ子(栗生楽泉園副園長) ●第二十三回九州教区教化研究会議 九月十六日~十七日 熊本県熊本市ニュースカイホテルにて開催 基調講演「現代に法華経を伝える」 難波宏正(大阪府本養寺住職) 第一分科会「中央教研を踏まえて摂折論を考える」 第二分科会「家庭における信仰相続」 第三分科会「社会問題への意思表示」 ●第三十三回近畿教区教化研究会議 十月九日 兵庫県姫路市イーグレひめじにて開催 講義「引導文について」 南條孝仁(全国声明師連合会前会長) 「宗定法要式の引導文の教学的解説」 浅井圓道(身延山大学前学長) 発表「私のオリジナル引導文」有本智心(大阪) 和田龍昌(大阪) 南條孝仁(和泉) パネルディスカッション「引導文を語る」 コーディネーター 難波宏正(大阪府本養寺住職) ●第二十回北陸教区教化研究会議 十一月十九日 福井県小浜市ホテルアーバンポート花椿にて開催 基調講演「現代都会の葬儀事情について」 牛込覚心(臨済宗妙心寺派) 第一部会(社会問題部会) 「望ましい寺院づくり」 第二部会(寺院経済問題部会) 「現代に於ける葬儀の有り方について」 ●第二十七回中部教区教化研究会議 十一月十五日 愛知県津島市津島勤労福祉会館にて開催 基調講演「日蓮聖人における摂受と折伏について」 庵谷行亨(立正大学教授) 分散会共通テーマ 「布教の現状を考える(摂受折伏問題をとおして)」 ●第二十二回東北教区教化研究会議 十一月二十七日 岩手県盛岡市ホテル東日本にて開催 基調講演「信仰相続|少子高齢化時代を迎えて|」 久住謙是(現宗研所長) 研究討議 コーディネーター梅森寛誠(宮城県法運寺住職) ●第二十八回京浜教区教化研究会議 平成十六年二月二十六日 東京都品川区立正大学にて開催 テーマ 「いのち・自殺者三万人の時代を迎えて」 基調講演 「自殺の実態とその予防・宗教者としての役割」 斎藤友紀雄(日本自殺予防学会常務理事) 「遺族の気持ち・自死遺児の訴え」 西田正弘・自死遺児の学生 (あしなが育英会) パネルディスカッション コーディネーター吉田尚英(京浜教研運営委員) パネラー 斎藤友紀雄 西田正弘 早水日秀(日蓮宗声明導師) 松田英秀(姫路蓮正結社教導) 坂輪宣政(現宗研研究員) ●第二十八回山静教区教化研究会議 平成十六年二月二十六日 山梨県南アルプス市白根桃源文化会館にて開催 テーマ「すばらしい葬儀をするために…」 ~ホール葬のあり方を考える~ 基調提案 コーディネーター小林是綱(常徳寺住職) 「法要実践の立場から」石原顕正(立本寺住職) 「山梨県教研センター研究報告」飯室智光(法泉寺住職) 「寺での葬儀に取り組んでいる立場から」 大平智宣(要法寺住職) 「葬祭業者の立場として…」 鈴木信(㈱アピオ) 「葬儀に関する一般信徒の立場から」伊藤繁(法久寺檀徒) ●第二十一回千葉教区教化研究会議 平成十六年三月三日 千葉県安房郡ニュー小湊ホテル吉夢にて開催 テーマ「人口減少をふまえて10~20年後の 寺院がどうなるかを考える」 講演「千葉県における少子高齢化の現状」 弓野武郎(㈱ちばぎん総合研究所) 「目前に迫った人口減少 |お寺は生き残れるのか‥を探る」 久住謙是(現宗研所長) 2、研究・調査活動 左記の各プロジェクトチームにおいて、それぞれ調査・研究を進めた。 ●現代と教学プロジェクト (伊藤如顕顧問、石川教道・早坂鳳城・吉田弘信・有本智心各嘱託、中井本秀・松森孝雄各研究員) ①摂折論の現代的把握(宗門の基本姿勢) ②教学の現代的把握 ●教団・教化プロジェクト (石川浩徳・新間智照・井本学雄各顧問、石川修道・馬渡竜彦・山田妙眞・影山教俊・遠藤了暉・小林貫誠・野村環右・成田東吾・大島豊扇・鈴木大道各嘱託、宇都宮恵禎・内山善行・馬島浄圭・讃岐英昌・小寺成文・伊藤美妙・中里観泰各研究員) ①世間の目線にたった布教(布教伝道) ②二十一世紀に適応する具体的な教師像(教育) ③財団法人(財政) ④過疎過密にかかわる寺院の適正配置(組織) ⑤葬儀に係わる全てのことについての規範(葬儀) ⑥デジタル ⑦全女性教師アンケート ⑧お題目総弘通運動総括 ●現代社会プロジェクト (木村勝行顧問、石井英雄・石原顕正・牟田口義隆・黒木源章・梅森寛誠各嘱託、坂輪宣政・堀江宏文・八竹成奉各研究員) ①社会問題への意思表示(布教伝道) ②立正平和運動 ③生命倫理 ④新宗教 ●教研会議プロジェクト (岩本泰寛・灘上智生・馬渡竜彦・影山教俊・小澤恵修・早坂鳳城・梅森寛誠各嘱託、中井本秀研究員) =cd=70b6研究講座・教化学研究集会・研究懇談会を開催した。 ●十月二十日、教化学研究集会を大阪府高槻市総合 市民交流センターに於いて開催した。 講演「日蓮聖人をとりまく信者たち |池上氏・四条氏」 石川修道(現宗研嘱託) ●十一月五日、第四回教化学研究発表大会を宗務院に於いて開催した。 〈特別発表〉 「日蓮宗は社会規範についてどう考えるか」 川村孝照(日本伝統文化研究所所長) 「教化学における゛布教教化=cd=ba39の意味」 影山教俊(現宗研嘱託) 「日蓮聖人の生国|安房の国東條郷について|」 石川修道(現宗研嘱託) 「目線を現代に合わせた行動と現代社会の諸問題に対する提案」 芳根鋭蔵(東京都法蓮寺檀信徒) 「社会の目線で、日蓮聖人生誕八百年を考える」 町田栄作(大本山清澄寺護山会会長) 「創価学会『折伏教典』について」 伊藤立教(現宗研主任) 「近世洛北鷹峰における法華信仰について(その二)|灰屋紹益と吉野太夫の法華信仰|」 奥田正叡(京都府常照寺住職) 「寺院経営の一方策|ユニークな墓地造成」 草野弘有(宮城県本国寺住職) 「信行活動には寺族も一緒に参加協力致しましょう!」 大森ゆきゑ(神奈川県延寿寺寺庭婦人) 「法華経の行者実践教本を作ろう!」 服部即明(愛知県泉龍寺住職) 「『六巻抄』の構造と問題点(四) |「文底秘沈抄」本門の題目編を通して|」 早坂鳳城(現宗研嘱託) 研究発表 第五十六回日蓮宗教学発表大会にて研究発表を行った。 「日蓮聖人の生国|安房の国東條郷について|」 石川修道(現宗研嘱託) 「天台止観とは何か |行動科学の視点で修行を問いなおす|」 影山教俊(現宗研嘱託) 特別講演 「日蓮宗子弟教育の課題 |現代のあるべき教師像の一提言|」 久住謙是(現宗研所長) コーディネーター伊藤立教(現宗研主任) 研究例会 ●研究員が各自のテーマに沿って研究・調査を行い、研究発表を行った。発表テーマと発表者は次の通りである。 「宗教に立場を置いた学的研究の可能性について」中井本秀 「軍政下ビルマの僧侶の役割と活動に学ぶ」 馬島浄圭 「全女性教師アンケート報告書から見た、これからの女性教師像」伊藤美妙 「中観派の破邪の論理について」松森孝雄 「『全女性教師アンケート報告書=cd=ba32に関する一考察 |ジェンダーステレオタイプにはまる教師像|」宇都宮恵禎 「聖教新聞から見る創価学会」八竹成奉 「過疎地寺院対策についての考察」小寺成文 「幸福の科学における布教伝道」内山善行 「ストゥーパとヴィハーラ」堀江宏文 「葬儀について」讃岐英昌 =cd=70b9第十四回法華経・日蓮聖人・教団論研究セミナーを公開講座とし、宗務院で講演と懇談会を開いた。 ●二月十八日 講題 「日本の若者はなぜ世界で最も人を殺さなくなったのか」 長谷川眞理子(進化生物学者・早稲田大学教授) 「隠し選挙とイラク出兵 |公明党創価学会の危険な亡国体質」 川=cd=4abd泰資(政治評論家・椙山女学園大学教授) 3、出版・資料収集 「現代宗教研究」第三十八号を編集し、全教師に配布した。 =cd=70b6教団史研究資料の一つとして、各種資料より「平成十四年日蓮宗年表」を作成し、全教師に配布した。 第四回教化学研究発表大会の発表をまとめ、小冊子を作成し、全教師に配布した。 女性教師を対象に行ったアンケートをまとめ、「日蓮宗全女性教師アンケート報告書」を作成し、全教師に配布した。 =cd=70b9現宗研教化資料シリーズ№11「創価学会の徹底的解剖|お題目総弘通運動のために|」と№16「創価学会の内部矛盾」を合本発行し、全教師に配布した。 =cd=70ba新宗教関係資料を収集し、保管した。 =cd=70bb各種伝道教化に関する資料を収集し、保管した。 =cd=70bc伝道・教化・研究に必要な図書を購入した。 =cd=70bd今年度購入・寄贈図書のコンピュータ管理のための蔵書整理とデータ作成を行った。 4、研究交流・会議 六月十七日、東京都港区別院真福寺にて真言宗智山派主催の「第二十三回各宗研究機関交流会」が開催された。今回は「各宗研究機関交流会のあり方をめぐって」をテーマに、今後の「交流会」自体のあり方、方向性について意見交換を行った。また、各教団・研究所発行の関係資料を交換し、研究交流を深めた。 =cd=70b6六月二十四日、宗務院にて第十八回「教化センター連絡会議」を開催した。会議では、各センター発行の布教・教化・伝道資料の交換が行われるとともに、センター運営に関する問題点と各センター間の交流推進について話し合われた。 十月八日、東京都杉並区佼成図書館視聴覚ホールにて第二回「教団付置研究所懇話会」が開催された。 研究報告「『葬祭~現代的意義と課題』を 出版しての問題点」 曹洞宗総合研究センター 研究発表1「宗教とテロリズム|・11をめぐる一考察|」中央学術研究所 研究発表2「エキュメニズムと宗教間対話」 NCC宗教研究所 顧問会議・嘱託会議・研究員会議を開催し、研究所並びに研究のあり方などについて討議し、内容の充実に努めた。 =cd=70b9教区・管区主催の各種研究会議・研究会などに出席した。