現代宗教研究第38号 2004年03月 発行
資料「教化研究会議と教化センターのしおり」(『研究時報』第十九号抜粋)
資料
「教化研究会議と教化センターのしおり」
(『研究時報』第十九号抜粋)
伝道宗門づくりに先駆的に取り組んできた教化研究会議と教化センターは、現宗研が現場の教師の声にこたえて実施してきたものです。伝道宗門へと機構改革した宗門の今日を見通していたこの動きについて、昭和五十三年三月二十日に現宗研が発行した『研究時報』第十九号の抜粋を参考資料として転載しますので、資料としてご活用下さい。(所管、教員等は当時のまま)
一、現宗研は、日蓮教学の現代的解明をめざし教学、教団史、諸学問の研究実踐に努める。
一、現宗研は、日蓮教学にもとずき現代における諸問題を把握するための研究に努める。
一、現宗研は、現代に適応する信行および布教体系の確立をめざし布教・教化の方策に関する研究交流と資料教材の作成に努める。
一、現宗研は、日蓮宗の把握と諸宗教教団の解明をめざし現代における日蓮宗及び諸宗教の実態調査と資料作成に努める。
一、現宗研は、宗内外に事業内容と成果を報告発表するため出版活動を推進し、研究に携わる住職教師の交流・連帯の場を築くことに努める。
当面する教化研究活動の三つの柱
◎ 十の教区で教化研究会議を開催し、いっそうの充実を図り教化交流の輪をひろげ教化活動をつみ重ねていこう。
◎ 七十四管区に教化センターを設置し、地域に適応した教化内容と資料教材を作成活用していこう。
◎ 教化活動に取り組む教師中心の伝道宗門づくりをめざし、教師一人ひとりが立上り協力しあっていこう。
教化研究会議をさらに拡大させ、持続的につみ重ねていこう
1 教化研究会議とは
一、布教教化について教師がおたがいに交流し討議しあい、学びあう場です。
二、当面しているさまざまな問題をとりあげ、現代に対応する教化のあり方を研究しあう場です。
三、教化上の悩みや問題点をさぐり、それをどのように打開したらよいかをみんなで考え話しあう場です。
四、伝道宗門の確立をめざし、教師の意見や要望を宗門に反映させる場です。
五、この会議では年齢、性別、役職などの別はなく、みんな平等の資格で自由に意見をのべあうことができます。
2 教化研究会議を開く必要性
現代における教化の目標は、なによりも法華経と宗祖の教えをひろめ、檀信徒のみならず未信徒をこの教えのもとに結集することにあります。
このためには、今日の時代がどんな特徴をもち、現代に生きる人々がなにに苦しみ、悩んでいるのか。私たち教師は、この現代社会をよく知り、それに応じて何を、どんな方法で説いていくべきなのか、をまず考える必要にせまられています。
何よりも第一に「時」をしっかりと理解し把握することが教化の出発点といえます。
とくに現代の日本は、はげしく移り変わっています。檀信徒をふくむ国民はだれしも、切実な生活への不安に苦しみ、深刻に考えこんでいます。公害や交通事故、病気になったときの不安、老後のことなど、いまもさきゆきにも危機感をもっています。都市化がすすみ、農村からは働き手がへり、大都市には膨大な人々が集まっています。農業による生活のめどもたゝず、都市ではよそよそしい人間関係に人々は孤独になっています。この現象はまた寺檀関係の距離を遠ざけ、そのワクに入らない膨大な未信徒を生んでいます。核家族化はますます進み「家」はくずれ、先祖代々の意識も変わりつゝあります。それは同時に、世代のことなる家族間のふれあいや習慣信仰のうけわたしがうすれ、反面では核家族という小舟が社会や生活不安の濁れた海になげだされる状態をうんでいます。青年たちも、生きがいをもつことができず、子供たちもすくすくと育つ環境が失われています。疎外と断絶、不安と危機、不正と濁悪にみちているのが現代といえましょう。しかし、この中で現代人が生きる糧を求ているのも事実です。こうした人々の悩みに共感同苦する立場にたち、人々の苦しみや現代社会の姿を把握することなしに、教化を有効に行なうことは不可能です。また、人々が従来の仏教のあり方にいだく意識の変化や寺檀関係の変容に対処する教化の方向が探求される必要があります。そこで、私たちは、現代と現代人の直面する問題や願いを知り、寺檀関係のワク内にとどまらないで、現代人の苦しみをともに苦しみ、信仰によって解決にみちびいていける国民にひろく開かれた教化、現代人の魂によびかけられる教化を行なっていくことが、現代における第二の目標として考えられます。このことによって、檀信徒にたいする血のかよった、信仰的なむすびつきをもち、檀家を信徒に、家の信仰を家庭と個人の信仰へきずいていく教化が可能となります。現代における教化の目標の第三には、この現実に対処するための教化の組織体制をきずいていかねばならないという点です。檀信徒をはじめ未信徒、地域住民の教化にむけて、寺院間、僧侶間の密接な協力関係をつくり、手をたずさえて教化を行なうこと、宗門の機構、行政を教化中心に再編成し、組織的、統一的な教化の方針をうち出せるようにすること、布教教化にとりくめる教師を養成すること、つねに教師が集まり自己研修すること、などがどうしても求められてきます。そして、当面の教化内容を明らかにし、個人プレーにとどまらず協同化した集団プレーの教化にとり組み、伝統的な方法を基礎としながら現代に適応する教化方法、技術を生かすとりくみを行なうことが大切です。護法統一信行はこの目標を、信行学を中心に深めるものであり、教化研究会議は、現代を知り、現代人の悩みをつかみ、これに適応する教化を協同して、学びつつ実践し、実践しつつ学ぶことによって、現実的、集団的に具体化するためのものなのです。
3 教研会議の内容と歩み
教研会議は、昭和四十三年に第一回会議を開いてから今日まで中央で開き、地方では東北・近畿・中四国・北海道・山陰・中部・関東・京浜で開かれてきました。また、九州・北陸でも開かれることになっています。
教研会議では、広範な問題をとりあげてきました。また一度の会議で語りつくせないため、継続しながら討議してきたテーマもあります。
いまその概要をあげると、次の通りです。
㈰「現代社会」の歴史状況を認識することをめざす−−都市と農村における教化の諸問題、地域における教化活動のあり方、都市化現象に対応する教化の問題点とその具体化、公害問題にたいする教化のあり方、などをとりあげました。
㈪「教化の対象」に応じた教化を考える−−少年、青年、壮年、老年の年齢別に応じた教化の方法、青少年教化の経験、社会教育、学校教育、信徒教化の課題、個人教化の必要性と工夫、集団教化とメディアの重要性、面接技術(カウンセリング)、兼職、子弟教育についてなどが語られました。
㈫日常的、具体的に行なっている教化活動における事例の交流とそのあり方を検討する−−行法、文書、視聴覚、音楽などの各分野をとりあげ、とくに文書や掲示伝道を中心とする教化のあり方を研究し多種多様な教化資料教材を作成しました。
㈬信仰教学と教化活動との結合をめざす−−伝道の精神、日蓮宗と伝道、教師の倫理と宗義の実践、現代の伝道における「立正安国」の意義と実践、日蓮聖人の教えと公害問題、地域寺院史の発表、現代の教団と寺院および寺檀関係のあり方、日蓮聖人の報恩と報恩教化などをシンポジュウム、講演及び会議の中で深めました。
㈭教師の連帯と教化活動の活発化を図り、宗門へそれを反映させるとともに教研会議の定着拡大をめざす−−教化カリキュラム作成についての要望によって、カリキュラム作成委員会が設置されました。七百遠忌をめざす報恩教化の方向を提示しました。文書伝道の活発化や「教化の友」の発行、青少年修養道場の拡大などの活動のすそ野もひろがりつつあります。教化に関する教師の連帯については、宗務区にて地域教研が開かれ、地域独自の教化が討議され、教化センターづくりをめざすまでになっています。
4 教研会議の開催と運営
▽中央教研は毎年一回、九月初旬に開かれる。主催は日蓮宗宗務院教務部。会議の実務一切を行う。企画運営は現宗研。現宗研のなかに運営委員会(=嘱託)がおかれ、開催要項ならびに会議が実施される。地域教研の運営委員が参加し、宗門として取りくむ教化内容や地域に適応した教化の方策を具体化する。経費は、宗務院予算中に計上される。
▽地域(教区)教研は、毎年一回そのつど担当する教区内の宗務所のもとで開かれる。主催は教務部(現宗研)、教区内宗務所。その地域で運営委員会を設置し、企画運営と事務を行う。経費は、宗務院からの補助金、宗務所助成金その他。会費(宿泊等の必要経費)を原則として徴収する。
▽教化活動の日常化と地域に適応した教化方策を具体化するため、教研運営委員を中心に宗務所はじめ他の機構・組織と協力しつつ管区内もしくは教区内に〈教化センター〉を設置することをめざす。
▽教化交流の輪をひろげ、身近かな教化問題を語りあい具体化するため、〈管区教研〉を開くよう努力する。
5 教研会議の当面する方向
当面の方針として次のように考えています。
㈰教区および管区において地域教研を開き、地域における教化研究活動を活発にしてゆく。
㈪地域における「教化センター」をつくり、人的な連帯と資料の交流・組織化をはかってゆく。
㈫地域教研の内容と方向を宗門全体に反映していくため、地域教研を土台とする中央教研を開いてゆく。
㈬「宗祖の教え」と「現代」とを結合し、護法統一信行と教研会議とを関連させながら宗門としての組織的、統一的な教化活動の発展に寄与する。そのために、中央教研では、今までの成果にたって、このテーマをとりあげ信仰的・実践的に、しかも具体的に地のついた教化研究を充実させる。
㈭教研会議を持続させ、教師による教化活動の経験や意見を反映させ資料教材の配布と充実につとめる。
◎とくに、七百遠忌を当面の目標とする報恩のための教化活動について取りくんでいます。この点に関しては、教研会議において宣言および決議がなされています。
教化センターの設置と実動をめざそう
1 教化センターとは
(1) 教化センターは、住職教師が相互に協力しあい、教化活動の組織的な推進を図り、伝道宗門づくりをめざしていく教化交流の場です。
(2) 教化センターは、教化研究会議の充実をめざし、現代にいかし教化内容と方策について研修しあい、その企画・運営・具体化に努める教化研究の場です。
(3) 教化センターは、教化活動の実例・情報や要望課題を出しあい、日常の教化に活用できる資料教材(教箋・パンフ・寺報・しおり・本・スライド・映写機・掲示板など)の収集・貸出し、紹介および作成配布を行う実動の場です。
2 地域教化センターの役割
地域の教化センターの目的は次の点です。
㈰教区、管区単位で教化にとりくむために、教師間の人的交流をつねに、なが続きさせてつみ重ね、協力体制をつくること。これによって、例えば、お盆の法話や教材をセンターを通じて依頼し、協力しあうことができる。個人的にたのんでも勿論よいわけであるが、いろいろな人、さまざまな角度からの言説布教の進展に寄与できる。また文書伝道をする場合は、その分野の経験者との交流や支援、資料をえることによって役立たせることができる。
㈪資料の管理と利用を行ないやすくし、いつでも活用し参考にできるようにすること。また一寺院では購入しえないような資料、器材をセンターで備えたり、ある寺の資料、器材を活用できる仲介をはたすこと。また地域の各寺院における教化内容、資料器材状況などの一覧表をつくり、教師の活動に貢献する役割をもつこと。
㈫現代における教化に関する内容の把握、資料の収集と保管、人材交流を通じて、教化センターを中心とする教師間の交流と研さんを図り、地域の教化活動に寄与すること。
などの点にあります。
この教化センターは、㈰管内に設ける、㈪教区単位に設ける、ことが必要です。設置の場所は、宗務所がある特定の寺でもよいと思いますが、その責任と利用宣伝は教化にたずさわる教師が行なうことが大切です。同時に、そのためには地域教研でこの問題を充分話しあい、センターがなぜ必要なのか、必要ならばどのようにするかを深め、その意見の一致にもとづいて設置することが望ましいと思います。つまり、地域教研でセンターづくりを決め、教区単位の連絡事務所をおき、宗務所と協力して各管区におくよう努めるようにしてほしいと思います。少なくとも、集まった資料をおくところ、資料が利用できるようにすること、随時にその実務あるいは連絡の労をとれる人をはっきりさせること、などがあればよいと思います。どんな人がどんな教化をしているか、どんな教化をやりたいと思っているか、どんな資料があるか、など地域の教化現状が把握できればセンターは大きな役割をもてると思います。
3 管区における教化センター関係図
4 教化センター設置要綱(案)
一、理 念 1. 管区における教化活動の推進を、宗門が制度的に支援していく機関として、各管区に「教化センター」を設置する。
2. 寺院、教師間の教化交流、相互協力を一層強化するために「教化センター」を設置する。
3. 宗務所の機能のうち、特に第四条七項地方の布教及び社会教化事業に関する事項、八項護法運動に関する事項を強力に推進するために「教化センター」を設置する。
4. 宗門と地域寺院教師が伝道教化を軸として有機的に協力し、研究交流しあう場として「教化センター」を設置する。
5. 地域教化の在り方を組織的、日常的に研究交流し推進していく場として教化センターを設置する。
二、目 的 1. 宗門の地域伝道を強化し
2. 地域における教化活動を発展させ
3. 教師間の提携協力をはかる中で
4. 教化のための研究、交流、布教伝道を推進するため、「教化センター」を設置する。
三、活 動 1. 院・管区その他発行の教化資料の管区内への配布(教箋・パンフ・教誌等)
2. 教化資料の収集と作成・指導(案内状教箋・寺報・パンフ等)
3. 教化資財の整備・貸出し、紹介等(本・八ミリ・十六ミリ・映写機・スライド等)
4. 「伝道カー」布教の斡旋、受付実施(宗内ニュース・映画等の紹介実施)
5. 「街頭行脚」の要請に対する相談実施
6. 教化伝道に対する研究会、講演会、集会等の開催
7. 教化交流誌「教化の友」発行への協力
8. 地域教化研究会議の企画・運営・開催の推進
9. 中央教研への参加・協力
10. 護法統一信行の推進と支援および管区内布教活動への参画
11. 教化に活用しえる出版物・図書の保管、委託および紹介
12. その他、必要な事業
四、性 格 1. 地域の教化伝道に役立つ機能を最優先させること。
2. 教師であれば、誰でも、いつでも活用できるセンターとすること。
3. 教化上の体験や苦心を遠慮なく話しあえるセンターとする。
4. 地方の教師の教化上の意見や提言が宗門にとどく機能を保証すること。
5. 教化上の情報を交換し、相互に意見や要望を自由に出しあえるセンターとする。
6. 教化上の経験を学びあい、教材資料を交流、又作成し、自由に活用しあえる場にすること。
7. 教師の教学布教研鑽のために卒直に役立っていく機能を保証していくこと。
8. 地域の日常的教化と、地域の教研会議を実りあるものにするために企画、運営・実施に主体的に取組む、教化のための連帯と実行の機関とすること。
9. 宗務院(特に教務部、現宗研)との密接な提携をはかり、教区、宗務所との理解と後援を得つつ、しかも管区内の各会(三会、青年会)とも協力して教化活動を推進していく場とすること。
10. 「教化センター」間の全国的協力交流の場を保証していくこと。
11. 中央教研を実質的に支えていく場となっていること。
五、名 称 (日蓮宗都道府県)『教化センター』という。
六、所在地 「教化センター」は管区宗務所内、又は運営委員自坊内に置く。
七、役 員 「教化センター」に左の役員を置く。
教化センター長(代表) 一 名
〃事務局長(運営委員長) 一 名
〃運営委員(教研運営委員) 若干名
八、運 営 1. 教化センター代表は、センターの事業を掌握指導し、地域の教化活動を推進する。
2. 教化センター事務局長は、センターの事務を統轄する。
3. 運営委員はセンター運営の推進につとめる。
4. センター運営はセンター代表事務局長、運営委員の協議によって行う。
5. センター役員の任期は所長の任期と同じとする。但し再任を妨げない。
6. 各管区教化センター運営委員会合同会議を年一回中央で行う。
九、財 政 各管区教化センターの費用は次によってみる。
1. 宗務院教化センター助成金
2. 宗務所
3. 管内教師協賛
4. 教化賛助金(檀信徒志納金)
5. 事業収入
6. そ の 他
5《参考資料》
東京西部教化センター規約
一、名 称 東京西部教化センターと称する。
二、目 的 東京西部宗務所管内における教化活動を推進し、住職・教師が相互に協力しあい教化内容の方策を研究交流し具体化していくため教化センターを設置し実動する。
三、事業内容㈰教化資料・教材の収集・保管・紹介・作成頒布。
㈪教化に関する研究会・集会等の開催。
㈫教化相談窓口の設置と人材交流の促進。
㈬中央及び京浜教化研究会議への協力と京浜教化センター設置をめざす活動。
㈭教化情報を伝達するための教宣活動。
㈮護法運動等管内諸活動への協力。
㈯その他必要な事業。
四、運 営(1)教化センターに左の運営委員をおき職務を分掌する。
センター代表 一 名
運営委員長 一 名
会 計 一 名
運営委員(企画・渉外・庶務担当) 若干名
相談室委員 若干名
(2)運営委員は、教化研究会議運営委員を兼ねる。
(3)運営委員は、本人の自由意志により運営委員になる事が出来、また退くことができる。
五、参加資格 管内住職教師及び寺族であれば、自由に参加できる。
六、連 絡 所 東京西部宗務所内もしくはセンター代表運営委員の自坊内におく。
七、経 費 ㈰宗務所助成金
㈪賛助金
㈫事業収入
㈬その他
付則 (1)本規約は、昭和五十三年四月十八日より施行する。規約の改定は運営委員の合議による。
(2)会計年度は、その年の四月一日より翌年三月三十一日までとする。予算・決算の報告は必ず宗務所に報告しなければならない。