ホーム > 刊行物 > 教化学研究(論集) > 教化学研究2 現代宗教研究第45号別冊 > 寺院教会結社という三段階方式は必要か

刊行物

PDF版をダウンロードする

教化学研究2 現代宗教研究第45号別冊 2011年03月 発行

寺院教会結社という三段階方式は必要か

寺院教会結社という三段階方式は必要か

森 下 龍 浄

■ はじめに……教会・結社からの聞き取りでわかったこと。
 結社というと「政治結社」かと間違われ、「秘密結社」かと疑われる。教会というと「キリスト教会」ではないことを、まずは説明せねばならない。特にキリスト教の多い長崎では。県庁の宗教担当者など「日蓮宗はなぜ三段階なのですか」と逆に質問してくる始末である。
 神奈川県・辻本師はミトラ・サンガ機関誌上に「都市開教・拠点確保は可能か」として「三百坪の規定をクリアーすることの困難さ」を指摘するとともに、「宗務院・宗務所は法人設立書類作成指導の面やら、設立が叶った場合の労い方やら、まだまだの感あり、考慮願いたい。」と訴えている。……長崎県合川宗務所長も同じ意識をもって所長会議で似たような質問をした由である。
 「すべて◎◎寺でいいところを、教会結社とあるのが不思議でならない」「新興宗教に間違われる」「差別ではないか」「これからの人の芽を摘む仕組み」(寺庭婦人三氏)。
 「寺院教会結社」の「寺院」への一本化方策はないものか。現状は、何がネックになっているのか。

■ 宗祖もあばらや・庵室から……出発なさったのでは。
 どうも本宗における寺院設立の際のハードルが高すぎはしないか。条件をクリアーできなかったのか、諸般の事情があったのか、とにもかくにもまずは単立として第一歩を踏み出さざるを得なかったケースの今後を、想定範囲内でシミュレートしてみると……。本宗に帰属?合流?するとして、その許可の可否が云々されるのだろうか。その時、県庁が「ちゃんとした宗教活動の道場である」として許可したものを、「伝道宗門」を標榜する本宗に不許可という選択肢があるのかどうか。有りとすれば「ハードルが高い」ことになろうし、信者は「宗門は冷たいね」の感を抱こう。本宗の規則に不案内であろうから「伝道宗門」「異体同心」とは真逆の印象を持つことになろう。ないとすれば、設立時にすでに「寺号公称」でよかったことになる。悩ましいところである。
 結社など、設立の容易さとそれに連動する責任(法人)の所在も担保されてなく、宗教行為を逸脱してもその対処・対応が悩ましい。それらを考慮した上でなお、教会結社が寺院に「昇格」を望む声をどうする。教会結社、信者は、どのくらいの割合で寺院昇格を期待し、又は「このままが楽でいい」と思っておられるのかどうか。
 私が教会結社の信者であったとして、まずは、当然、「◎◎寺」の称号をもらって、他にも同道を勧めたいと思うもの。それら信者さんからの声を聞いた者としてそう言える。寺院ではなく、教会・結社を見る信者側の信用度(これから初めて教会結社を識る時、寺院と同じように何ら違和感なく、信じて尋ねて行ってみようかと腰をあげるかどうか)の問題・課題。檀家になろうにも不安感がある。この先何百年も安心してお世話になれるのだろうか、と。

■ 布教拠点確保への助成……宗門は、助成しようと態勢を整備しておられる。資金などの提供であるが、まずは寺号許可の声が多い。同じ大きさの題目旗を押し立てて進みたいのに、「小旗を振りなさい」としているみたいで、共同歩調の実効性が心もとない。横に広がって進もうにも、つなぐ手に差別の匂いがあれば、異体同心での邁進はおぼつかない。いわゆる「解釈改憲」にチエを絞るでなく、「暫定措置」にも逃げない。「会通」をも持ち出さない、本当の環境整備。必死に平等を目指し、こぞって宗門運動に邁進しようとする時、このインフラ整備は欠かせないと思うが……。

■ 教会・結社問題は寺院問題……ミトラ会員ならずとも、寺院昇格を望む声は多い。片や寺院側である。公許をうけたらもう双六の上がりよろしく、いま通ってきた困難の山坂に目をそそがないというのでは、悲しすぎる。「すでに公許を得しものは、未だ得ざるものに奉仕」の姿勢が必要であろう。宗門のマイノリティ問題の一つといえようか……黒人問題は白人問題と言われるように……。他宗門信徒へのまなざしどころか、実は我が宗内同胞へのまなざしが冷たいのではないのか。一種の無関心、ネグレクトといわれるのだけは避けたいもの。先発寺院はどんな助勢ができるのか。宗制検討も含めて、現代宗教研究所こそそれにふさわしく思う。その専門の人たちによって究めてもらいたい。
 他宗門の巨大資金に指をくわえて嘆くのでなく、すぐにも手を付けられそうなのは、この三段階方式を一律に地均しするよう宗門を後押しすること。初歩を踏み出した布教拠点をその方面からも助勢することは究めて意義のあることであると思う。

■ 五千か寺みんな手をつなごうのインフラ整備……
 解決策を探りたい。一般寺院の一人として前向きに考える人たちと手をつなぎたい。長い間通用してきたことを転換するには困難は常につきまとう。しかし、御題目をいただく本宗に希望の二文字もこれまたピタリと寄り添っているはず。ビッグウェーブを起こそう。「あっそうか、そういう手があったのか」という妙案・段階があるのかどうか。更にもう一歩進んで「わァ、すばらしい仕組み」という日の到来が近からんことを……。
 

PDF版をダウンロードする