現代宗教研究第40号 2006年03月 発行
禅宗の師家制度について パート2 臨済宗妙心寺派の師家制度について(調査メモ)
研究・調査プロジェクト報告
禅宗の師家制度について
パート2 臨済宗妙心寺派の師家制度について(調査メモ)
(千葉県東泉寺住職) 内 山 善 行
前回、曹洞宗の師家制度について調査したので、今回は、臨済宗妙心寺派の師家制度および現状を調査し、メモとして記してみた。
臨済宗は、かつては鎌倉と京都に五山と十刹があった。現在は十四派に分かれ、京都、鎌倉、山梨、静岡、滋賀、富山、広島に各派の本山がある。
『双ヶ丘の東、京都市右京区には「花園」という地があります。昔、この地域には公卿の邸があり、お花畑があって、四季折々に美しい花が咲き乱れ、いつしか「花園」と呼ばれるようになっていました。
この地をこよなく愛し、ここに離宮を構えて禅の奥義を究めるとともに、常に世の中の平和を願われた法皇さま、そのお方が第九十五代天皇、花園法皇さまです。法皇は、この花園の離宮を改めて禅寺にされました。
これが、臨済宗妙心寺派の大本山である妙心寺のはじまりです。山号は正法山(しょうぼうざん)と称します。開山は関山慧玄(かんざんえげん)、開基は花園法皇です。
現在の妙心寺は、塔頭四十六ヶ寺、末寺は日本をはじめ世界各国にわたり三千四百ヶ寺余り、在籍僧数は約七千人を数えます。関連機関としては花園大学、花園高校、花園中学校、洛西花園幼稚園などがあります。』(妙心寺ガイド http://www.myoshin.com/guide/history.htmlより)
これから述べる内容すべてに、妙心寺派の「法階」が関わってくるので、まず、「法階」について記す。
『臨済宗妙心寺派宗制』(平成九年五月一日発行)「法階規程」によると、妙心寺派の法階は十四あり、教師及び教師補の資格に応じて、次のようになっている。
法階 等級 種別
①特住 大教師 教師
②暦住 大教師 教師
③再住 大教師 教師
④前住 一等教師 教師
⑤住持 二等教師 教師
⑥準住 三等教師 教師
⑦東堂 四等教師 教師
⑧西堂 五等教師 教師
⑨塔主 六等教師 教師
⑩前堂 七等教師 教師
⑪首座 八等教師 教師
⑫蔵主 教師補
⑬知客 教師補
⑭沙弥 教師補
以下、妙心寺派宗制の「法階規程」を参考に、右の要点をまとめてみると
・得度式を終え、沙弥になれば僧侶の資格が得られる。
・住職資格は首座(しゅそ)から得られる。一般には、住職を〜和尚とよぶ。
・教師資格は、大教師から八等教師まである。沙弥、知客(しか)、蔵主(ぞうす)までは教師補。
・等級は検定表に書くだけであって、一般的には「〜職である」、という言い方をする。自分が何等教師であるかというのは、検定表を見ないとわからない者もいる。たとえば住持(職)という法階を認識しているだけであって、「自分は〜等教師である」という認識は少ない。
・法臈と印可証明がないと、住持(職)以上の法階の申請ができない。住持(職)以上であれば師家になれるが、普通、師家分上(注1)は再住(大教師)以上。
・再住(職)、暦住(職)は、社会一般の功績も加味される。今までの妙心寺派の役職を長年勤めた者に対しては、法階を生前に与えたり、亡くなってから与えたりすることがある。
・僧堂の師家で、再住(職)以上の法階をとった者は、数年以内に本山で開堂式を挙げることが義務づけられている。師家分上として宗派に届けてあっても、本山での開堂式を挙げていないと、妙心寺派の管長に選ばれる資格がない。
・特住は、妙心寺派の管長しかなれない。妙心寺派の管長になるには、妙心寺派の本山で式を挙げることが要件で、本山で式を挙行した順番に管長職につく。
・管長は師家の中の最高の師家であるが、管長職に選ばれる資格のある師家は十八名。管長推戴委員会が、その十八名の中から妙心寺派管長を選出する。
◎師家制度、および師家養成規則
・宗制としては、師家制度、および師家養成規則というものはない。しかし、「師家分上」というものがある。各妙心寺派(注2)には修行道場が全国にある。以前は、その各老師から出される印可状をもって師家とみなす、という判断をしていた。しかし秘密裏に出される要素を含むので、真偽の判断が難しい。そこで、妙心寺派の専門道場の後任として選ばれた人は自動的に師家とみなすが、そうでない人は妙心寺派に対して、確かな証明書を提出しないかぎり、師家とはみなさない。
・師家となる者には、一般的に印可証明的なものが出されるが、それは老師の印であり、宗派が出すのではない。
・自分で勝手に師家と名乗る人もいるが、当然、宗派に登録されている人以外は認めない。
◎師家
・専門道場の一番偉い人は老師(注3)であり、名簿上、四十七人の師家がいる。
・専門道場を終えたとき、老師から印可をもらった者だけを、一般的には師家という、もしくは、ある僧堂の元道場主をいう。しかし、これは公表されない。
◎師家の要件
法階として住持(二等教師)以上の資格を有すること、僧堂で修行し老師から印可をもらうこと、僧堂で修行僧を指導すること、これらの三つが師家の要件である。
◎師家分上
・僧堂に入って、老師から印可を受けた者以外は、「師家の扱いをするだけ」であり、それを「師家分上」という。
・師家分上とは、「師家になる資格のある人」のことであり、師家と同じ扱いをするということ。師家見習いみたいなもので、「道場に入っていない老師」という扱い。法の流れを正式に継承した者にしか、老師は印可を与えないから、僧堂でどんなに長く修行しても、印可証明を出してもらえない者もいる。
・制度上、師家分上を妙心寺派として公に認めるのは、専門道場の師家が出したものだけである。それ以外は、妙心寺派に対して、老師からの証明書が提出されないかぎり認めない。老師がすでに亡くなっている場合、その老師に師事した他の老師の証明書、又は、所属する寺院の法類による請願書が提出されてこないかぎり、師家分上としては認めない。
・師家分上を受けてから師家になるには、僧堂の老師から印可を受け、なおかつ僧堂で修行僧を指導しなければならない。
・師家分上を受けても、住持(二等教師)にならなければ師家にはなれない。というのは、紫衣を着られるのが住持以上の者だからである。これより下の法衣で師家分上になることは認めない。だから、師家になる人は、住持まですぐに上がれる。老師と禅問答をして、初めて老師から印可をもらった修行僧は、当然、住持以上を取ることができる。
・師家分上の登録は、住職になって初めて有効になる。学徒(注4)の場合、印可をもらっても、法階を取らないかぎり何のメリットもないので、登録しない。
◎師家登録
・四十七人が妙心寺派によって公的に認められているが、それ以外にも多数いるようである。僧堂の後任住職になった場合は、本山に届出がなくても、前の老師が自分の僧堂を譲り与えたということで、師家として扱われる。印可を与えるのは、各僧堂の老師の判断に委ねられており、また「あなたは何人の法嗣(はっす)(注5)を出したか」ということは、直接問われることはない。
・老師には、専門道場の師家に任命された時点で、住持(二等教師)からでもなれる。法階と師家との関連は、また別である。(注6)
◎妙心寺派以外の僧堂を出ても師家と認めるか
・妙心寺派以外の臨済宗系の僧堂、たとえば南禅寺僧堂、東福寺僧堂、天竜寺僧堂を出ても通用する。
・東福寺派で二十年間僧籍を持っている人が妙心寺派に入ってきた場合、その法臈の年数はこちらでも生きるが、妙心寺派の一からの位(沙弥)からになる。
・他派の僧籍を兼ねることができるのは、師家だけである。妙心寺派の僧籍をもって東福寺派の管長をされた老師もいる。
◎女性の師家は
・いない。制度上ない。妙心寺派に僧籍登録されている僧侶は、現在六六七八人。そのうち、女性教師は約五十人いるが、女性の師家はいない。専門の尼僧堂も最近できたが、そこを出ても師家には、なれない。すなわち、堂長にはなれるが、印可を与える資格がないということである。それゆえ、師家分上として認められるかどうかは、これからの制度に待たれている。
・臨済宗の問答は、一対一の問答である。尼僧と男僧が向かい合って、喧嘩腰の問答をするのは、考えられないということである(問答で耐えられなくなった時、半分喧嘩のようになる場合があるという)。また、進み具合が人によって大きく異なっているので、ただ長く修行しただけでは、印可は出ない。。また、自分の意を汲まない老師に何年ついても、印可は出ない。自分と心の行き来がある老師に師事しないと、印可は出してもらえない。それゆえ、男僧が女性を教える修行道場のことは考えていない。
◎日本人以外の師家は
かつて一人いたが、現在はいない。
◎在家居士で師家から印可を受けられるか
・在家居士の状態で印可をもらっても何にもならない。宗派名簿に登録してもらえないから、何の資格もない。また、居士の状態では、修行歴の証明を僧堂が出さない。
・得度せずに、僧堂に入って居士の状態でいくら修行をしても、それは法臈には入らないので、師家分上は認められない。認めてほしいという者がたまにはあるが、正式には無理。
◎教師になるためには
・教師になるためには、原則として、僧堂(専門道場)を出なければならない。ただし、小寺院に住んで、兼職している者は、本山の安居会を三回出れば、前堂(職)の資格が得られる。最終的には五回出ることが望ましい。
・首座(八等教師))から住職資格が得られるが、七等地、八等地の住職に限られる(注7)。ただし本山安居会を一回以上出なければならない。
・本山安居会は、毎年八月二十日から十日間と決まっている。
・僧堂修行の最低単位は一年以上。本山の救済制度の安居会を五回、すなわち最低五年しても、法階の最高の上限が決まっている。七十、八十になっても、その安居会に出た人の法階には上限があり、それから上は妙心寺派の役職、たとえば議員などの役職をしないかぎりは、法階は上がらない。
・平成十五年までは、花園大学の仏教学科を卒業し、僧堂生活一年で準住(三等教師)の位を得られたが、平成十六年以降、前堂(七等教師)の位に変更された。
・検定表と実質の法階の状況を踏まえた両方の併用であるから、当然、僧堂生活四年以上の人には、一度に位を上がれるという優待制度、すなわち、一足飛びに住持(職)までいける、という制度がある。毎年僧堂を出ると、準住(職)は四年目にとれるが、前堂(職)を取る年度によって三年に早めることもできる。しかし一年度には一法階しか上がれない。
※日蓮宗では身延山信行道場で三十五日間の修行をすれば、日蓮宗公認の僧侶として住職資格が与えられるが、妙心寺派の場合、全国統一的な、そのような修行道場の制度化は、なされていない。
また、妙心寺派の場合、まず、師匠と弟子の関係が重視され、老師から出される証明書によって僧階資格が判断される。
◎僧堂の内容は教育なのか、鍛錬か
鍛錬でもあり教育でもある。公案プラス儀式も教える。ただし、初歩的な仏教知識、一般的な宗教法人法、税法、寺院規則等は僧堂では教えない。
基礎教養もなく、お経も知らずに僧堂に入ってくるのは不可。僧堂に入る以前の、師匠による子弟教育のあり方が問われている。
◎本山僧堂以外の専門道場は
妙心寺派の専門道場は、福岡、大分、愛媛、兵庫、京都、名古屋、愛知、岐阜、静岡、埼玉、栃木、宮城など、全国に十九ヶ所ある。
各僧堂ごとに特徴があり、師家によっても内容が違う。座禅中心に考えるところもあれば、作務中心のところもある。僧堂の体質や、好きな師家を事前に調査して、自分に合った僧堂に入って修行することができる。
曹洞宗では、本山僧堂と地方僧堂を比べた場合、、本山僧堂のほうが質実ともに良いようであるが、この宗派では、そういうことはない。どこの僧堂の証明書でも平等に扱われる。本山僧堂を出ても、地方僧堂を出ても、資格としては同じである。楽な僧堂もあれば、厳しい僧堂もあるであろうが。
◎僧堂修行入門の儀式
得度して、掛塔(注8)、庭詰(注9)、旦過詰(注10)があり、その上、入堂式が終わって初めて、僧侶としてのスタートラインに立つことができる。
・掛塔資格は十七歳以上。
・修行が終わるまではその道場を出ませんという誓約書を書かせられる。
・僧堂に入る前に、庭詰とか旦過詰があり、新参者の覚悟のほどが試される。このことが終わって初めて、正式 に入堂許可される(注11)。
・庭詰めは五日、旦過詰めは四日ほど。だいたい朝七時から夕方五時頃まで続き、この間休憩はない。
・最近は庭詰め中に、「追い出し」というものがある。新参者は、玄関に座り、持参した振り分け荷物の上に顔を伏せたままの状態で、入門の許しを乞い続ける。一時間ほどたった頃(足がしびれた頃を見計らって)、応対の雲水は、彼を門の外に放り出す。これを「追い出し」という(救済策)。最近の若者は、足がしびれた状態で追い出された時、足がついていかず転倒して怪我をすることが、以前より増えたらしい。そのため、規律も昔と比べると、だいぶ緩くなったようである。
住職研修会
・住職になったときの研修会と、住職研修会の二つがある。
・学徒から副住職になって住職、もしくは、学徒からいきなり住職、という形をとる。学徒は三二一六名いるが、住職数二四〇七を重複することはない。
・以前は、住職、副住職になった時、翌年度に研修会履修義務があったが、今は、副住職は、前堂職を取得するのと重複するので、前堂職取得のための、事前の研修会にとって代えられた。
・六等地以上の寺院住職になるためには、僧堂に行かなければならない。
住職研修会制度が始まったのは昭和六十年頃。制度施行後に研修会を受けた者には履修義務はないが、
① 制度施行前に就任している者が他の寺に行った場合は、履修義務が発生するかどうか
② 制度施行前に住職資格を持っていた者が、新たに他の寺の住職になった場合、住職研修会履修の義務が発生するか否か
ということが、現在問題になっており、検討中である。
前堂職を取得した場合、前堂職法階規則研修会を受ける。すなわち、前堂職→教区住職研修会(二泊三日などの住職研修会)受講→毎年一法階ずつ上がれる、というようになっている。
また、宗門行政が会費を徴収して、法式、規則、儀式のやり方、宗教法人法、税務関係等の研修会を催し、僧侶としての、全般的な知識を所有できるように指導している。
※日蓮宗と同様、僧侶の質の低下が問題になってきた。そこで、住職資格証明書が出ても、妙心寺派の僧侶としていきなり認めるのはどうかということになり、住職資格としての一番最初の、前堂(職)を取るときには、事前に研修会を受けなければならなくなった。試験を受けて、不合格なら再試験。基礎教育は師匠任せではなく、宗門行政が介入してきた。
今までは課金を納めることによって、ある位まで上がれることがあったが、それは廃止された。
◎住職寺院について
現在、妙心寺派寺院は三三八七ヶ寺ある。そのうち住職寺院は二四〇七カ寺。無住五十カ寺。残りは兼務と代務である。すなわち、九八〇ほどの寺院には専門の住職はいない。
最近十年、やっと合併・解散を宗派として認めるようになってきたが、それまでは寺院数を減らすことは許可されていなかった。。
◎寺格について
寺格は自己申請により、上げたり下げたりすることが可能である。昔は一等地だったが、今は四等地という寺院もある。今の寺格は年間の収入に見合わせて適切ではない、と判断した場合、申告し、等級を下げることができる。しかし、審査は厳しい。過去三年間の収支決算表を提出し、それを本山で審査し決定するのだが、承認はなかなか出ない。
◎課金
付加点プラス調整点(二割)の合計で、課金がきまる方式が、十数年前から導入された。
これにより、都市部と田舎の格差がなくなる。同じ妙心寺派の一等地でも、東京の一等地と田舎の一等地とでは、付加金が最高二割違う。日蓮宗は付加点だけで調整点がなく、自己申告だけでやっているので、この点に関して、妙心寺派は本宗より近代的である。
◎後継者問題
・一等地以上の寺院は、寺院の収入だけで生活できる。また、一等地以上の寺院で兼職している人は少ない。一等地の寺院は、京都市内で百五十、亀岡では二百、東京都内では百前後。寺院収入だけで生活を維持できるのは、一千ヶ寺前後、すなわち三割弱。こういう寺院には、後継者問題は浮上してこないが、それ以外の三分の二の寺院は、住職になっても兼職をしないと生活を維持することが困難なので、自分の所で後継者が育ちにくいという。
・住職の世襲率が、最近、年々下がってきているので、後継者の相談室を二年ほど前に開設し、育成方法を考えている。
・住職数が二四〇七人、副住職数が五六六人。住職寺が二千数ヶ寺あり、僧侶が約七千人いるので、後継者がいるはずだが、出家しても住職にならないものが多いという。経済基盤の年収に対して、厳しい修行が割に合わないということが、子供が後を継がなくなった一因を成しているのか。
・専門道場は、僧侶になる一歩手前の状態を最終的に作り出すもの。それ以前の、僧侶予備軍を増やし、育成するための方策を模索している。
・後継者問題の解決方法は、平成二十一年の開山無相大師六百五十年遠忌に合わせて、予算を組んで宗門的に考える方向に向かっているが、解決策の探求までには未だ至っていない。
◎宗門行政と師家
・修行僧を育てるのが僧堂(師家)の役割であり、事務的に取り扱いをするのが行政上の宗務総長。実際は宗務総長が権限をもっているが、権威的に、「宗務総長が取り扱い、管長(師家長)が認証する」という二段階方式をとっている。
・師家とか老師のような、修行の方面を専門とする者は、行政にほとんど関わってこない。また、師家分上の者も関わってこない。
◎宗務総長について
二十七教区から、宗会議員が三十一名出ているが、その議員たちによって宗務総長候補が選ばれる。しかし、宗務総長候補は宗会議員の中から選ばれるのではない。公職の重複はできないので、現職の宗会議員は宗務総長になることができない。また、いくら有名であっても、議会で推薦されなかったら、なることができない。
◎海外布教について
・海外寺院は、台湾、アメリカ、ハワイ、フランスなどに、全部で9ヶ寺ある。毎年報告書を出せば、助成金がもらえる。
・花園大学で山田無文老師についた者が、台湾に帰って寺院を造った。これにより、最近は、台湾の人が現地で出家して、日本に入ってきている。
・修行歴のない人には特別に資格を出して、海外寺院住職として任命している。海外布教師には助成金を与えるが、本山に対しての付加金・徴収金はない。
◎教化センター
・指導はするが、出版物が中心。教化資料の作成に重点がおかれている。
◎禅センター
・平成十七年四月、東京都世田谷区に東京禅センターを開設し、毎月、禅の文化や歴史を中心に、仏教一般から現代社会の諸問題にわたる公開講座を開催している。その講演内容はホームページ上に全文掲載されている(http://www.myoshin-zen-c.jp/event/event_koukai.htm)。また、同年十一月、禅センター内に、禅の入門ワークショップを立ち上げ、初心者の指導を行っている。
注
(1) 僧堂に入って修行して、印可を受けた者以外は、師家の扱いをするだけであり、それを「師家分上」という。
(2) 妙心寺派は、妙心寺六世の時に四つの法脈に分かれた。すなわち、妙心寺派は、東海派を筆頭とする四派(法脈)から成る。
(3) 一般的には、専門道場(僧堂)で指導する師家を老師という。
(4) 「学徒とは、得度師から僧侶の衣鉢及び安名を受け、首座職以下の法階を有する者をいう。ただし、首座職で寺院又は教会の住職となった者は、これを除く。」(僧侶規程 第四条)
(5) 法脈のこと。
(6) 普通、師家分上は再住職(大教師)以上である。
(7) 妙心寺派では、年齢二十歳以上の有資格者は、法階に応じて次のような等地に住職することができる。
一 特例地から準別格地まで 住持職以上
二 一等地 準住職以上
三 二等地 東堂職以上
四 三等地 西堂職以上
五 四等地から六等地まで 前堂職以上
六 七等地及び八等地 首座職以上
(8) 掛搭(かとう)。搭は搭鈎、即ち、物を引っかける鉤(かぎ)のこと。入堂許可された新参者が、衣鉢袋を僧堂の単(たん)の鈎に掛けたことから始まり、修行僧が一定の寺に止住することをいう。単とは、紅紙小片に衆僧の名を一紙(単片)一名ずつ書き、禅堂の各位の床上の壁に貼ったことから転じて、禅堂における各自の座席のことをいう。通常、各自の単は畳一畳。
(9) 庭詰(にわづめ)。専門道場に入門を志願する僧が、必ず通過しなければならない儀式。僧は、すぐには玄関から上がることを許されず、玄関で終日座して低頭し、入門の願いを乞わなければならない。
(10) 旦過詰(たんがづめ)。庭詰が終わると、旦過寮(たんがりょう)という小部屋に押し込められ、終日、数日間、坐禅詰めしなくてはならない。この儀礼を通過して、新参者は正式に入門許可される
(11) この辺の事情に関しては、佐藤義英画・文『雲水日記 絵で見る禅の修行生活』(禅文化研究所、一九八四)、高橋勇音『かたつむりの詩 禅堂つれづれ物語』(禅文化研究所、二〇〇三)などに詳しく述べられている。