記事公開日:2020年01月24日
看仏連携
【シンポジウム】
看仏連携
【主催】
浄土宗大蓮寺・株式会社サフィール
【日時】
2020年1月18日(土)13時30分
【場所】
浄土宗大蓮寺客殿
【講演】
Introduction:なぜ「看仏連携」なのか
秋田光彦(浄土宗大蓮寺・應典院住職)
Session1:社会資源としての寺院・僧侶の可能性を探る
東海林良昌(浄土宗雲上寺副住職・浄土宗総合研究所研究員)
三浦紀夫(真宗大谷派僧侶・NPOビハーラ21事務局長)
コーディネーター/秋田光彦
Session2:がん専門看護師×臨床宗教師〜看取り・グリーフケア・ACP・終活
志方優子(JCHO大阪病院がん看護専門看護師)
鍋島直樹(龍谷大学教授・臨床宗教師研修主任)
コーディネーター/河野秀一(株式会社サフィール代表・一般社団法人日本看護管理学会評議員・臨済宗妙心寺派少林寺閑栖住職)
Workshop:「モンク&ナース・看仏連携のニーズを探る〜何ができて、何ができないか〜」
コメンテーター/大河内大博(浄土宗願生寺住職・医療法人社団日翔会チャプレン)
コーディネーター/齋藤佳津子(浄土宗應典院主査)
Presentation:「地域包括ケアシステムにおける看護師と寺院・僧侶との連携」
河野秀一
【趣旨】
2025年を目指し、地域包括ケアシステムが普及していく一方、地域における看護・介護のあり方について様々な課題があがっています。とりわけ地域互助のための拠点(場)や担い手の不足、また自宅へ赴く看護者・介護者へのサポート体制の構築が指摘されており、「地域社会の力を活用する」という理想にはまだまだ及ばないのが現状です。既存の枠組みにとどまらず、新たな社会資源を開発し、そこにもう一つのテーマや人材を投じることで活性化を試みることはできないでしょうか。
今回、日本最大の社会資源である「お寺」に注目し、地域の寺院や僧侶と、看護や介護が互いにどのようなコミットメントができるのか、専門職どうしが話し合う場を設けることとしました。
お寺に対する注目のポイントは3つあります。まず、お寺そのものの「場の力」。地域の歴史と伝統を備えた寺院は、多くの生老病死の舞台として親しまれ、敬われてきました。また、そこに内在する「癒しの力」は、みほとけさまや祈りの作法等を通して、人々の心の平和と安寧を育んできました。大いなる物語の力とも言えるでしょうか。そして「学びの力」。寺子屋の伝統を有するお寺は、工夫次第で現代の終活教育センターとして高齢者の知的参加を呼び込みます。
看護と介護の連携はもちろん、とりわけ現在の地域包括ケアシステムでは扱われない死後の事務やとむらい(葬儀・埋葬・供養)、または人それぞれの死生観の涵養も含め、お寺は、もう一つの「人生会議」(アドバンス・ケア・プランニングの愛称)の舞台としてふさわしいと思われます。
今後、都市部ではますます地域力は衰退し、共助の関係も成り立ちにくくなっています。看護と仏教の専門職、さらに市民・家族が手を結ぶ、新たな「看仏連携ネットワーク」の構築の可能性を、みなさんとともに語り合っていきたいと願っています。
【コメント】
今回の講演は僧侶及び看護、介護の領域に従事されている方が対象であったが、当日は満席で多くの関心を集めていたことを感じた。
よくお寺はコンビニよりも数が多いと言われるように、寺院という場は日本において最大の社会資源である。また、3.11以降は宗教の臨床化が進み、より一層寺院が持つ力が求められている。
医療現場では、患者が抱える様々な苦悩や痛みの全てに応答することは限界があるのではないかという問題意識から、宗教者が看護・介護と連携することの意義が提示された。
また、介護者や患者を支える家族や医療従事者などの人々は、孤立しやすく辛い思いを相談できずにいる場合が多い。患者や被介護者へのケアはもちろんのことであるが、直接的に支援のない周辺の人々へのケアという視点もいただいた。
セミナーの最後には、看護・介護に携わる方々と僧侶とが小さなグループを作ってワークショップを行った。
やはり、宗教者や寺院という場が必要とされていることが分かった。対して、寺院や僧侶自身の問題として、敷居が高かったり、話しかけづらいという問題も挙げられた。その中で、今回のセミナーでは異業種の交流が実現しこれからの連携の形を模索する良いきっかけとなったと感じる。