記事公開日:2019年12月04日
日本学術会議哲学委員会 公開シンポジウム
【シンポジウム】
日本学術会議哲学委員会公開シンポジウム
「世界哲学の可能性」
【主催】
日本学術会議哲学委員会
【日時】
2019年11月30日 13時30分~17時
【場所】
日本学術会議講堂
【講演者】
[報告者]
氣多雅子氏(日本学術会議連携会員 京都大学名誉教授)
日本哲学・宗教学「日本の思想伝統のもとで哲学するということ」
末木文美士氏(国際日本文化研究センター名誉教授)
仏教学「仏教から哲学を再構築する」
永井由佳里氏(日本学術会議連携会員 北陸先端科学技術大学院大学理事・副学長)
現代哲学・芸術論「世界哲学と芸術の未来」
[コメント]
河野哲也氏(日本学術会議連携会員 立教大学文学部教授)
中島隆博氏(日本学術会議連携会員 東京大学東洋文化研究所教授)
小林春夫氏(東京学芸大学教育学部教授)
【趣旨】
「哲学」の営みはこれまで、古代ギリシャに始まる「西洋哲学・倫理学」を中心に理解され、それとは別に「中国哲学」「インド哲学・仏教学」「日本哲学・思想史」「宗教学・比較思想」などが研究されてきました。近年そういった分断がされた枠組みを超えた「世界哲学」の構築が話題となっており、異なる文化伝統が並存する日本ならではの役割が期待されています。果たして人間に普遍的な哲学は存在するのか。世界という視点から実践する哲学が、独自の諸伝統を排除することはないのか。こういった基本問題を、各分野の代表的論者が集って話し合う、学術会議ならではのシンポジウムを意図しています。
【コメント】
はじめに、世界哲学が目指すのは画一化ではなく、世界各地の文化伝統を多面的に融合すること、という説明がされた。
論点として挙げられたのは、「普遍性」についてであった。多面的な哲学を融合させようとする時、ある種の普遍性が求められてくるが、その普遍性とは一体何をもって普遍であると言えるのか、という問題に対し、我々が目指すべきは「共有性」ではないかという提起があった。
異文脈の哲学同士が突発的に衝突し融合するには、各々が議論を後退させて根底まで戻り、共有できる最大公約数を算出するという作業が必要になる。
以上の過程を経て、表れてくるのが「玉虫色の普遍性」(他の講演者からも「足し算の普遍性」「黒い普遍性」という表現がなされた)である。
また「自由」という観点から、人間のあらゆる営みには自由が担保されているが、受け取り手によって善と悪の二面性を有する(芸術活動が環境問題になる等)ということがある。これについても「共有性」を検討する世界哲学の今後の課題であるとした。