記事公開日:2019年12月04日
第1回弔い委任研究会
【シンポジウム】
第1回弔い委任研究会
【主催】
日本弔い委任協会
【日時】
2019年11月29日 13時30分~16時30分
【場所】
仏教伝道センタービル
【講演者】
[講師]
北見万幸(横須賀市役所 エンディングプランサポート事業構築担当者)
薄井秀夫(寺院デザイン代表)
【趣旨】
■相互のノウハウや情報を共有
■分からない点を質問し合う
■取り組みを始めるきっかけとして
■「弔い委任」に取り組むお寺のネットワークを
日本弔い委任協会がスタートして半年が過ぎました。
「弔い委任」の考え方に共感し、自坊で取り組みを始めるお寺が増えつつあります。
その一方で、「実際に始めるには、どこから手をつけていいかわからない」「弔い委任をサポートしてくれる司法書士などの専門家をどうやって確保したらいいかわからない」などの意見も聞かれます。
「取り組みたいんだけど、どのくらい大変なのか予想がつかないので、二の足を踏んでいる」という声もあります。
また「実際に始めたものの、これでいいのか不安だ」という声も聞かれます。実際に「弔い委任」の活動を行うにあたっては、現場において、様々な不安と直面するのは当然のことです。
そこで協会では、会員同士があつまって、相互にノウハウや情報を提供し合い、また分からない点を質問し合うことで、それぞれの不安を無くし、個々の知識や対応スキルを向上させるための場をつくりたいと考えています。
そこで今回、第1回の「弔い委任 研究会」を11月29日(金)に行うことになりました。
会議では、最新の弔い委任(死後事務委任)の情報を得るとともに、会員寺院同士の情報共有を行います。
さらには現在直面している課題解決の糸口を得るとともに、これから「弔い委任」に取り組んでいくお寺同士のネットワークを深めていきたいと考えております。
もちろん、「まだ、人に話せるような活動はしていないよ」という方も歓迎です。
そうした方こそ、他寺院の取り組みを、ぜひ聞いていただきたいと思います。
疑問点や気になることは、どんどん質問しあっていただければと思います。
そして、この会議が、取り組みを深めていく機会として、あるいは、取り組みを始めるきっかけとして、お役にたてることができたらと思います。
こんな方はぜひご参加ください。
・どこから手をつけていいかわからない
・どのくらい大変なのか予想がつかないので、二の足を踏んでいる
・実際に始めたものの、これでいいのか不安だ
お寺における弔い委任の構築──その具体的な方法
また今回は、弔い委任の仕組みを、お寺に構築するための具体的な方法についての講義もあります。
4月、5月、10月に行った「お寺のための弔い委任講座」終了後、参加者の方々から、「弔い委任の仕組みはわかったが、お寺でそれを取り入れる場合の、具体的な方法がわからない」という声が強くありました。
そのため今回は、「お寺における弔い委任の構築──その具体的な方法」と題して、できるだけわかりやすく、お寺に取り入れるための方法をお伝えします。
ゲストスピーカーの北見万幸氏について
行政が進める弔い委任の先進事例を紹介。全国に先駆けて死後事務委任(弔い委任)による「おひとり様支援」を行う横須賀市。
その具体的な内容と成果について、横須賀市の福祉部福祉専門官でエンディングサポート事業構築担当者の北見万幸氏に話していただきます。
おひとり様がどのように弔われているかの現実と、社会福祉としての「弔い委任」の大切さについてや、行政と寺院がどう連携すればいいかについてもお話しいただきます。
弔い委任とは?
弔い委任とは、家族がいないなどの事情があって、自身の弔いに不安を抱える人のため、葬儀・火葬・納骨を中心に、死後の諸手続や生前の生活支援(成年後見、身元保証など)を、家族にかわってお寺が行う仕組み。
通常は法律的に家族しかできないことを、死後事務委任契約によって家族以外(お寺など)の支援者が行うことが可能となる。
ひとりさまの檀家のお葬式は誰がやる?
お寺の檀家さんに、おひとり様のおばあちゃんがいおらっしゃいませんか?
あるいは、お子様のいないご夫婦がいらっしゃいませんか?
そういった方々が亡くなった時、お葬式は誰が行うのでしょうか?
さらに永代供養墓に申し込む方の大半は、子どもがいないということが理由で永代供養墓を選んでいます。
そういった方々が亡くなった時、お葬式は誰が行うのでしょうか?
永代供養墓に申し込んだのに、いつの間にか市の合祀墓に合葬
遺族がいない方が亡くなると、行政が面倒を見ることになりますが、その場合、お葬式が行われることは無く、火葬を行い、納骨をするだけです。
本人がいくら遺産を残していても、そのお金を使うことはできず、結局は直葬になってしまいます。
納骨についても、地域との関わりの深い昔からの檀家さんは、行政が菩提寺を探してくれるでしょうが、そうでない方、特に永代供養墓の申込者の場合、お寺に申し込んだことがわからず、自治体の合祀墓に合葬されてしまう可能性がかなり高いのです。
現代という時代では、ひとなみに弔われることもなく、自身の用意したお墓に納骨されることも無いということが当たり前のように起きています。
しかも遺産をたっぷり残しているのに、こうした状況になってしまう人が少なくないのです。
お寺こそが「弔われない」不安を無くしていける
実はこうした方々の「弔われたい」という思いを実現するための仕組みがあり、死後事務委任契約と呼ばれています。
これまでもNPO法人や士業(司法書士・行政書士)などが、受け手となって行ってきました。ただ、この死後事務委任契約は、二十年以上の歴史と実績がありますが、まだまだ定着しているとは言いがたい状況です。
そこでこの度設立した「日本弔い委任協会」では、お寺を中心として地域のネットワークを構築し、この「死後事務委任契約」を利用して、このような方々の「弔い」を支援する仕組みを広めていきたいと考えています。
その最初の事業として、「お寺のための弔い委任講座──死後事務委任で看取りと弔いのお寺に」を行いたいと思います。
法律のことは苦手、地域とつきあいが無いのでネットワークをつくる自信が無いなど、お寺には様々な事情があります。個々の状況にあわせた仕組みを構築できるような内容です。
檀家のおひとり様や子どものいないご夫婦の「弔い」が心配なご住職、永代供養墓に申し込んだ方々の遺骨がちゃんとお寺に納骨されるようにする責任があると考えているご住職など、様々な方に参加していただきたいと考えています。
【コメント】
いまや終活という言葉が流行り、実際に自分の死後のことを考える人が少しずつ増えてきている。
しかし、本当に亡くなった時、自分が努力して準備した通りに弔われるのか。ゲストスピーカーの北見氏は、故人の意向通りに弔われるべきとの思いから、行政の立場から数々の事例を作ってこられた。
弔いの準備そのものよりも、生前の意思を「誰に」「どのように」伝えるか。少子高齢化が進み、遺族となりうる人が少なくなっていく時代において、誰がその役割を果たすのか、が主な趣旨であった。
また薄井氏からは、お寺こそ生前からコミュニケーションをとり、死後は弔いの意思を反映させ、遺族のない場合は施主となれる存在である。との示唆をいただいた。
講演後の共有の時間では、参加者の中で既に弔い委任を始めている方がおり、運営上の課題、今後の展望等のお話をうかがった。やはり檀信徒や地域の人々からの要請は多いようである。
弔い委任は、死後に対する安心感に直結するもので、宗教者の大きな役割であると感じた。