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お知らせ

記事公開日:2018年12月07日

葬式仏教価値向上委員会第21回研究会

【シンポジウム】
第21回研究会テーマ
「福祉の現場とお寺の協働から生まれるもの
ー介護業界との対話を通して」

【主催】
寺院デザイン主催 葬式仏教価値向上委員会

【日時】
2018年12月6日 13時30分~16時40分

【場所】
仏教伝道センタービル

【講演者】
[講師]
川畑誠志氏(人とくらしラボ代表)
吉川美津子氏(葬儀ビジネス研究所代表)

【趣旨】
“看取り”から遠ざかるお寺

 現代人は長寿になり、死のあり方も変化しています。
 その変化のひとつに、亡くなるまでの時間の多くを、介護施設で暮らす人が増えているということがあります。死ぬまでの数年間を施設で暮らしていると、地域やお寺とは交流が無くなってしまいます。お寺としては、しばらく会わないなと思っていたら、葬儀の連絡が来て、初めて具合が悪かったことを知るというケースが一般的になりつつあります。
 お寺はこうした状況の中、ますます“看取り”から遠ざかっているのです。これは同時に、僧侶が死の専門家として期待されなくなりつつあることも意味しています。
 どんなに親しい檀家であっても、具合が悪くなって周囲が死を覚悟するような時が来ても、お寺に悩みを相談することはほとんどありません。相談があっても、それはお葬式の準備ということが多いと思います。
 現代では、僧侶は、人が死んでからしか、つきあうことができないというのが現実です。人が死に至るプロセスで、僧侶が関われることはほとんどありません。“看取り”の現場は、介護施設にあるのです。

介護の世界は制度が複雑でわかりにくい

 しかし、逆に考えれば、介護現場とお寺が協働できれば、お寺が“看取り”に関われるチャンスが生まれるのではないでしょうか。
 実際、そう考えたことのある僧侶も多いと思います。
 ただ現実として、介護の世界は制度が複雑で、全容を理解するのが簡単ではありません。介護業界と何らかの協働をしていこうと考えたが、途中であきらめたという人も少なくないはずです。どんな組織と、どうやって関わればいいのかが、わかりにくいのです。

介護福祉の専門家といっしょに考える

 そこでこ今回の葬式仏教価値向上委員会では、介護福祉コンサルタントをして活躍している川畑誠志氏(株式会社 人とくらしラボ 代表取締役)と、社会福祉士であり、葬儀・お墓・終活ビジネスコンサルタントでもある吉川美津子氏(葬儀ビジネス研究所代表)の二人をお呼びして、お寺が介護業界とどう接点を持つべきかについて、提言をしていただきます。

お寺が関わることのできる様々な可能性

 介護の現場とお寺は、様々なレベルで関われる可能性があります。
 もちろん日常的な寺院活動の延長線で関わることも可能です。介護の場としてお寺を利用してもらうという方法もあります。
 本格的なものとしては、お寺が事業主体になることだって考えられます。例えば、居宅介護支援事務所となることができたら、お寺が地域の介護の中心的な存在になることだってできるのです。

死んでからでは無く、終末期から関わるために

 講義では、介護業界の仕組みをはじめ、現代、介護の現場で問題になっていること、介護の現場が宗教者に求めることなどについて解説していただきます。
 またお寺に対する提言をしていただくと同時に、講師を交えたディスカッションを経て、お寺と介護の新しい関わり方を探っていきたいと思います。
 檀家の人たちと、地域の人たちと、死んでからでは無く終末期から関わることができれば、葬儀という場面でのお寺の価値が飛躍的に高まってくるでしょう。
 

【コメント】
葬式仏教価値向上委員会第21回研究会に参加して参りました。
介護業界の現状として介護保険、介護事業所、要介護認定シニア施設の入居率、高齢者の人口の推移などを解説していただき、その上での介護業界の問題についてもお話しいただきました。また、今回のこ講演の中で、現場での事例などもお話いただいた上で、寺院と事業者との関わり、連携を提案いただきました。
入居時の意識調査においては、約80%が施設での看取りを希望していることなど、介護業界では「看取り対応」というものは注目のワードであり、決して“看取り”に対して無関心という訳ではなく、そこに直接関わっていくことが、様々な理由から介護事業者では困難であるため、現在医療・介護現場、制度では埋められない部分に、宗教者が大きく関わっていけると実感する研究会でございました。