新年号奉祝文 2019年05月 発行
新年号奉祝文
奉祝文
畏くも上皇陛下におかれましては、御即位以来三十年余にわたり、常に国民とともに歩まれ、国安かれ民安かれと祈りを御捧げになられました。陛下は、「私はこれまで天皇の務めとして、何よりもまず、国民の安寧と幸せを祈ることを大切に考えてきましたが、同時に事にあたっては、時として人々の傍らに立ち、その声に耳を傾け、思いに寄り添うことも大切なことと考えて来ました」と、お話しくださりました。陛下はたびたび被災地を訪問され被災者に寄り添われ、時にはお声をお掛けになられました。また、慰霊のために、多くの戦蹟へ赴かれました。その光景を拝するたびに、陛下の大御心に感動し、国民等しく勇気をいただいたことと存じます。『史記』の「内平外成」、『書経』の「地平天成」を由来とし、国内外、天地ともに四海静謐、平和となるようにと願われて制定された「平成」の大御代に、心から感謝の誠をささげたく存じます。
御譲位により御即位あそばされました今上天皇陛下におかれましては、まことに慶賀の至りこの上なきものと存じます。『万葉集』巻五の「初春の令月にして、気淑く風和ぎ」を由縁とし制定されました「令和」は、「厳しい寒さの後に春の訪れを告げ、見事に咲き誇る梅の花のように、日本人が明日への希望とともに、それぞれの花を大きく咲かせることができる日本でありたい」との願いが込められた元号とのことです。「令」とは素晴らしいという意味であります。「和」とは、篤く仏法僧の三寶を敬うことを旨とし、「和を以て貴しと為す」と聖徳太子が定めたとされる十七条憲法に端を発する、日本の心ともいえる言葉でもあります。
一人ひとりを大切にし、平和にして調和のとれた和やかな素晴らしい日本、素晴らしい世界となるよう、宗門は挙げて、今上天皇陛下の大御心を奉じ、精進してまいることをお誓い申し上げ、御代替わりの言祝ぎと致します。謹しんで、聖寿の万歳と皇室の弥栄をお慶び申し上げます。
日蓮宗宗務総長 中川法政