記事公開日:2020年12月02日
生命倫理研究部会・第20回研究会
【研究部会】
教団付置研究所懇話会 生命倫理研究部会
【主催】
教団付置研究所懇話会 生命倫理部会
【日時】
2020年11月18日13時30分〜16時30分
【場所】
Web会議サービスZoom
【講演】
「ゲノム編集革命 ーCRISPR-Cas9の歴史から応用までー」
熊谷信是師(弘前大学農学生命科学部生物学科発生・生殖生物学研究室研究員/浄土宗総合研究所研究スタッフ)
【趣旨】
10月7日、本年のノーベル科学相の受賞者が発表され、エマニュエル・シャルパンティエ氏、ジェニファー・ダウドナ氏がその栄誉に輝きました。これにより、二人が開発したCRISPR-Cas9が様々な分野で応用されている実態やその倫理的な問題などについて報道されてきました。しかし、①CRISPR-Cas9とはどのような技術か、②発見から技術開発に至るまでの歴史、③CRISPR-Cas9の応用可能性、が網羅的に解説されている記事は多くありません。
今回の研究会では、再生生物学・幹細胞生物学を専攻する立場から、基本的な生物学の知識からCRISPR-Cas9の歴史、将来的な応用可能性、さらにその問題点について解説します。
【コメント】
かねてより、ゲノム編集の危険性や倫理的問題について様々な指摘がなされていた。一昨年の中国でのデザイナーベイビー誕生や、この度のCRISPR-Cas9の技術開発により、世界がどのような方向へ進んでいくのか。また、そのとき宗教者としてどのように考えるべきか、整理する機会となった。
講演では、ゲノム編集技術がもともと含んでいる諸問題、CRISPR-Cas9の登場により医薬業界の革新が加速することで起こる問題点について詳細な説明があった。生物の長い歴史の中で、淘汰の結果として現在生きている我々が、その歴史に逆らい、飛び越えるような形で人為的に手を加えることはどのような意味を持つのか、またどのような結果を招くのか、慎重に考える必要があると感じた。
生命科学は人間の生をより良いものにするために存在し、少しでも老いや死を遠ざけようとする。しかし、生命は須く死ぬものであるからこそ、どのように生き、どのように死ぬのかを必死に考えることができるのではないかと感じた。