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お知らせ

記事公開日:2019年04月01日

生命倫理研究部会・第19回研究会

【研究部会】
教団付置研究所懇話会 生命倫理研究部会

【主催】
教団付置研究所懇話会 生命倫理部会(担当:大本教学研鑽所)

【日時】
2019年3月26日13時30分〜16時50分

【場所】
浄土宗総合研究所

【講演】
「出生前診断について考える」野村真木子氏(中央学術研究所研究員)

【趣旨】
 2013年の導入以降、拡大の一途をたどる新型出生前診断(NIPT)について考える。日本で展開されている議論を整理したうえで、そこであまり語られていない視点を提示したい。キーワードは「自由」だ。そこで、このキーワードをとおして、宗教界が生命倫理をめぐる諸問題について果たしうる役割の可能性も考えたい。

【コメント】
 講義の前半は新型出生前診断(NIPT)の現状とその課題について、後半は宗教界が果たしうる役割についての示唆があった。
 2017年9月までの時点で診断を受けた、5万1139人のうち、陽性が確定した700人の妊婦の約9割となる654人が中絶を選択している。この選択をするにあたっての葛藤、苦痛は計り知れず、女性の負担はかなり大きい。
 野村氏は昨今の出生前診断に対する論調を4つのカテゴライズに分け、それぞれ説明した。
 いままで科学が追い求めてきたのは生死欲の追求(欲望の実現)としての「自由」であり、その限界はあると指摘した。その上で、我々宗教者が説かなければいけないのは、別の「自由」の概念を提示することである。
 つまり、「自由」には外向的に抑圧から逃れ多くの選択肢を獲得する「自由」と、内向的に限られた選択肢の中で必然を受け入れる「自由」の2種類がある。そのどちらも背反せず、相関関係にあるのだから、我々宗教者は後者の「自由」について言及する必要があるとした。
 この、宗教的「自由」を世の中の一般的な言説に翻訳し、伝える努力が必要である。