記事公開日:2019年03月18日
仏教の智慧を開く -浄土宗大本山増上寺所蔵宋版大蔵経デジタルアーカイブ化-
【シンポジウム】
平成30年度浄土宗総合研究所公開講座
仏教の智慧を開く -浄土宗大本山増上寺所蔵宋版大蔵経デジタルアーカイブ化-
【主催】
浄土宗総合研究所(浄土宗基本典籍の電子テキスト化プロジェクト班)
【日時】
2019年03月18日 13時~16時30分
【場所】
浄土宗大本山増上寺 光摂殿講堂
【講演者】
[報告者]
下田正弘氏(東京大学大学院人文社会系研究科教授)
上杉智英氏(京都国立博物館アソシエイトフェロー)
齊藤舜健氏(浄土宗総合研究所主任研究員)
永崎研宣氏(人文情報学研究所主席研究員)
【趣旨】(各講師発表要旨より)
・下田正弘(東京大学大学院人文社会系研究科教授)
「浄土宗と大蔵経 -増上寺三大蔵のデジタルアーカイブの意義-」
日本仏教の至宝の智慧でもある増上寺所蔵の三大蔵は、縮刷大蔵経、そして大正新脩大蔵経の底本と校合文献となった資料である。つまり増上寺所蔵三大蔵は、近代になり世界で仏教研究が開始したときから、そして現在においてもなお世界の仏教研究の基礎資料であり、この増上寺所蔵三大蔵から全世界の仏教研究がスタートしたといっても過言ではない。浄土宗大本山増上寺はこれまでこの三大蔵を守り続けることで仏教と自らの伝統を保持し続け、そして今、この伝統を全世界に開示することで、全世界の仏教研究を再び次世代へと牽引しようとしている。デジタルによる「第三の革命」とも言い得るこの時代における「仏教の智慧」のありかたを考えた際、社会基盤が根底から変容していく状況において、新たなる「仏教の智慧」のありかたを日本そして増上寺から発信していくことの意義について解説したい。
・上杉智英(京都国立博物館アソシエイトフェロー)
「浄土宗大本山増上寺所蔵宋版大蔵経について」
浄土宗大本山増上寺所蔵の宋版大蔵経はいわゆる「思渓版」と呼称され、南宋時代に刊行された一大仏教叢書である。本発表では①増上寺蔵思渓版大蔵経の来歴と印刷時期を概説し、②思渓版大蔵経研究上の意義、③刊本大蔵経の系譜研究上の意義、④大正蔵本の史料批判上の意義について解説したい。
・齊藤舜健(浄土宗総合研究所主任研究員)
「IIIFに準拠した増上寺蔵宋版大蔵経デジタルアーカイブの運用」
増上寺三大蔵中の宋版(思渓版)は、デジタル時代以前にマイクロフィルムに撮影収録された。今回、インターネット上での公開を前提として、その画像を電子化し、画像を公開するための国際的な枠組みであるIIIFに則ってデジタルアーカイブ化した。実際にどのように閲覧等ができるのか紹介する。
・永崎研宣(人文情報学研究所主席研究員)
「仏教の智慧を開く -デジタルアーカイブの実際-」
宋版大蔵経のデジタル公開が仏教研究の新たな 地平を切りひらいていくことは疑いない。このことを 通じてこれまで可能性に過ぎなかった様々な 事柄が現実化していくだろう。ここではその 一例として、SAT大蔵経データベースとの連携を 通じた大蔵経の新たな形を提示したい。
(HPより)
【コメント】
様々な視点から、「増上寺所蔵宋版大蔵経」のデジタルアーカイブ化の意義が提示された。思渓蔵は公開されたものがなかったとのことであり、今回の公開の意義の大きさを感じた。画像についてはシート貼りの上から撮影されたもので、シート自体の傷が紛れているものもあり、閲覧においての注意も説明された。実際の公開は2024年を予定しているとのことであるが、公開によって様々な研究が進展していくものと推察された。