記事公開日:2017年06月15日
葬式仏教価値向上委員会 第15回研究会
【シンポジウム】
葬式仏教価値向上委員会 第15回研究会
「お寺で<看取り>を学ぶということー上手な歳の取り方、病気のなり方、そして死に方」
【主催】
株式会社 寺院デザイン
【日時】
2017年06月15日 13時30分~16時30分
【場所】
仏教伝道センタービル
【講師】
玉置妙憂氏(高野山真言宗僧侶・看護師)
【趣旨】
看取りに戸惑う現代人
「看取り」というものは、家族を持つものなら誰しも、いつか必ず向き合わなければならないものです。
しかし私たちは、いざ家族の看取りに直面した時、どうしていいか、戸惑ってしまうというのが現実です。
日本人のほとんどが、自宅で亡くなっていた頃は、人が死にゆく姿は日常で、人がどのようにして亡くなっていくか、それをどう看取っていくかは、みな経験的に知っていました。同時に、家族や地域のコミュニティの中で、「看取りの知」とも言うべきものが伝えられてきました。
それが日本人のほとんどが病院で亡くなるようになって、死は高度に専門的な医療の管理下にはいるようになり、次第にこうした「看取りの知」が失われていくようになります。
しかし今、そうした状況への反省もあり、「地域での看取り」の重要性が説かれるようになってきました。
ただ私たち現代人は既に、どうやって人を看取ればいいのかを忘れてしまっています。だから、家族を看取らなければならなくなった時、どうしていいのかわからず、不安の連続の中、途方に暮れてしまうのです。
お寺という場で「看取りの知」を学ぶ
今回、葬式仏教価値向上委員会で講師を務めていただく玉置妙憂さんは、こうした時代だからこそ、お寺という場で、この「看取りの知」を伝えていくべきだと提言されています。
真言宗僧侶でもある玉置師は、長年にわたる看護師経験の中で、人が歳をとり、病気になり、死んでいく姿を見続けてきました。そうした経験をもとに玉置師は、人の老病死のプロセスの中で、看取りをする家族が、どのような心づもりで、どのような対応をしていけばよいのかを伝える活動を続けてきました。
また、スピリチュアルケアという視点で、介護や看護の現場にいる方々のサポートをするという活動も行っています。
参加型の養老指南塾
こうした中で玉置さんは、各地のお寺で、檀信徒や地域の方を対象にした「子が学ぶ親の介護と看取り 養老指南塾」という講座を続けています。
この講座は、親の介護のことが気になる世代の檀信徒や地域の方を対象とし、親の健康維持から、介護、看取りまで、私たちが家族の看取りを行うにあたっての、具体的な知識と心構え、対処の方法を学ぶというものです。
「高齢者の身体と心ー加齢による変化を知る」「高齢者の健康維持」「高齢者疑似体験」といった介護以前の心構えから、「介護?!そのときどうする」「知っておくと便利な介護技術」など介護が始まってからのこと、そして「看取りの知識と準備ー時間軸で見る身体の変化」「死、そこからはじまるもの」など、死にゆく人を看取る時までと、エンディングから死に至るまでの全てのプロセスを学ぶことが出来ます。
みんなで「看取りとお寺」について考える
講義では、玉置さんがどんな活動をしているかについてお話いただき、さらに、どのような人たちが参加しているか、参加してもらってどんな反応があったか、などについてお話いただきます。
またこれを機会に、「地域での看取りとお寺」がどうあるべきかを、皆さんと一緒に考えていければと思います。
(案内文抜粋)
【コメント】
延命措置を行わず、自宅で看取る場合に起こる死の兆候について、3ヶ月〜1ヶ月前、2週間〜1週間前、数日〜数時間前、最期の兆候など、具体的に提示していただきました。すべての人にぴったりと当てはまるものでもないのかと思われますが、病院に行った場合に起こりやすいこと、家族は心配に思ってしまうことでも身体的な働きや経過を具体的に知ることで、不安を少なく出来ることなどがあり、僧侶として今後看取りに向き合う時に、大変貴重な学びでありました。
高齢化が進み、今後病院外での看取りが増えることが予想されており、変化による、看取る者、看取られる者の心構えがとても重要になってまいります。お寺において行われる養老指南塾は、介護から、看取りの準備、実際の看取り、死と死後にも言及される、死にゆくことの総合的な学びの場となることが期待され、そこで担われる寺院や僧侶の役割は大きなものと思われます。